ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD GAD-JF-48

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神奈川県にお住まいのW.U.さんからGUILD GAD-JF-48のリペアご依頼をいただき、フレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターをお受け取りになって、W.U.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口英之様

 神奈川県のW.U.です。昨日ギターが無事到着いたしました。このたびのリペア、終始迅速かつ的確な対応を行っていただき当方も安心して気持ちよく技術の提供をうけることができました。こころより感謝いたします。

 ギターですが、チューニング関係の不満、10フレット近辺の音のつまりなど不満はすべて解消されておりました。また、こうしてリペアいただいたギターを弾いてみると、下から上まで均等に鳴り、リペア前でもそこそこ鳴っているかな?と思っていたものの、低音と高音のバランスが良くなかったことに気付きました。もともと力いっぱい弾いてしまうタイプですが、軽いタッチでも充分鳴るのでプレイにも余裕が生まれるかなと思いました。

 リペアというサービスを利用するのは今回が初めてです。どの楽器も購入時は一生モノにしようと思うのに段々気に入らなくなって何度手放したことか。今回の依頼で楽器に愛情を注ぐことのいろいろな意味がわかった気がします。実家で眠っている、沢山の私のライブを支えてくれた、今はボロボロになってしまったもう1本の安いギターもまたお願いしてみようかな、劇的に生まれ変わるんだろうな、と思わせるような樋口様のお仕事でした。

ブログを拝見致しますと年齢相応(失礼!)の身体のトラブルもおありになる様子。末永く健康でお仕事をなさってください。

 ありがとうございました。

W.U.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただけて、ホッと安心するとともに、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
今回リペアさせていただいたギターは比較的若くのですが、オリジナル状態でも箱鳴り感がありました。
ギターの潜在能力はどこまであるんだろう、と思いつつ作業を進めさせていただき、リペア後の音色には私も大変驚きました。

これから何十年もかけて部材が枯れていく間に、もっともっと音色も進化していくことと思います。
ギターと一緒に時を過ごされることで、その進化を楽しまれてください。

私の体調等にも温かいお心遣いをいただき、本当にありがとうございます。
これからも「まずは健康」を忘れず、少しでも多くのギターをよみがえらせていきたいと思っています。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フレット打ち込みの準備が整いました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.カットしたフレット端です。
10.フレットタング部をプライヤーでカットします。

11.バインディング加工後のフレット端です。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.フレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレットエッジ整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。