ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson B-15

戻る
広島県にお住まいのA.S.さんからGibson B-15のリペアご依頼をいただき、フレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、A.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口 様

本日、リペアをお願いしておりましたギターが届きました。
帰宅して、さっそくリペアから帰ってきたギターを弾いて楽しんでます。

今回、フレットの交換と弦周りのTUSQ化をお願いしたのですが、このギターはもともとアジャスタブルサドルのため、いくら木製サドルからTUSQサドルへ交換したところで、音自体はそれほど変わらないだろうなあと予想しておりました。
ですが、チューニングして、実際弾いてみてびっくりしました。
音量も増して、さらに弦自体の振動が左手にも伝わってきました。
ギターの全身から音が出ている、という感じです。

このギターは私と同年代に生まれ、おそらく幾人かの人の手を経た後に私のもとにやってきました。
今回リペアをお願いし、「より進化した形」で戻ってきてくれました。おそらくずっと手放すことなく手元に置いておくことと思います。

本当にどうもありがとうございました。

A.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただけて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。

ギターを受け取った時の試奏の印象は「少し控えめかな?」でしたが、 リペア後は「これからも現役!」という、とても元気なギターの声を聴くことができました。

年月を経たギターは少し手を加えるだけですばらしい音色に変貌するんだ、ということを改めて実感した次第です。

これからもB-15がA.S.さんの傍らで活躍することをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました 。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを暖めながら抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.削り粉をクリーニングします。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.2つ目のジグはこのように固定し、ネジを締めてフレットをプレスします。
16.順にプレスを進めていきます。

17.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
18.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスを行っている様子です。


19.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
20.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

21.カットしたフレット端です。
22.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

23.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
24.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレットエッジを整形している様子です。


25.整形されたフレット端です。
26.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

27.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
28.ボディもアクリル板でカバーしました。

29.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
30.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

31.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
32.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

33.さらにスチールウールで研磨を進めます。
34.最後はコンパウンドで磨き上げます。

35.プロテクタ類を外しましょう。
36.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ブリッジピン穴加工~サドル交換

1.まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
2.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

3.サドルを取り付けました。
4.弦高調整を終えたサドルです。