ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris S-96

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群馬県にお住まいのH.T.さんからMorris S-96のリペアご依頼をいただきました。
フレット交換を含む弦周りとピックアップのリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、H.T.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

この度は、モーリスS-96のギターのリペアを有難うございました。

B-BANDピックアップの代替品を探して頂き、お手数お掛けしました。
以前、他で弦高調整した後、開放弦でのビビリ音があり、いつも気にしていました。

さっそくリペア後に弾いてみましたら音がハッキリしてバランスも良くなり、箱鳴り感が増しました。
いつまでも鳴り響く音を聞いてニヤケテしまいました。
これからも大切に使いたいと思います。

機会が、ありましたら次回も宜しくお願い致します。
有難うございました。
H.T.

H.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただき、私もとてもうれしい思いとともにホッと安心した気持ちでいっぱいです。

仰るとおり、リペア前はあまり状態はよくありませんでしたが、試奏させていただくうちに「自分はこうなりたいんだ!」という、リペア後のイメージをギターからもらったような気がして、リペア中はそのイメージを再現させることに集中できたと思っています。
リペア後のギター全体からの「箱鳴り」はその潜在能力に私も驚き、ニヤケテしまった次第です(笑)。

これからもH.T.さんの傍らでMorris S-96が活躍することを心からお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フレット打ち込みの準備が整いました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.カットしたフレット端です。
10..フレットタング部をプライヤーでカットします。

11.バインディング加工後のフレット端です。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端加工の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当てて軽くコンとたたき、スライドさせて取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.サウンドホールにチューナーを取り付け、サドル山位置はフレット片で調整出来るようにしました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写し、削りだしていきます。

11.サドル山を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックアップ・リペア

1.オリジナル・ピックアップのバッテリーホルダが脱落しています。
2.ネックブロックのプレートから外れていました。

3.強度的に無理があるホルダのようです。
4.接着面積の大きいホルダを準備しました。

5.バッテリーがしっかりと固定されました。
6.破損していたアンダーサドル・ピックアップです。新しいピックアップと交換しました。