ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA L-10

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京都府にお住まいのN.I.さんからYAMAHA L-10とGibson BluesKingのリペアご依頼をいただきました。YAMAHA L-10はフレット交換、弦周りのTUSQ化に加えてバックボード割れリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、N.I.さんから暖かいメッセージが届きました。

昨日、2本の愛器が届きました。

YAMAHA L-10は27年前に購入した、私にとっては2本目のギターです。
当初からいい音を鳴らしてはいましたが、酷使によるフレットの摩耗やボディの損傷に加えて、エレアコが時代の趨勢となる中で別のギターに主役の座を奪われてしまい、長い眠りにつくことになりました。
しかし、樋口さんのリペアによって四半世紀ぶりに完全復活を遂げました。ボディの割れが見事に治るとともに、マイルドな高音、重みのある中低音を奏でるようになりました。そして、L-10は再び主役の座に返り咲きました。

Gibson BluesKingは、低音の鳴りの悪さに宿命的なものを感じていたのですが、オデッセイのHPを見ているうちにその原因がサドルとボディの接触状態にあることに気づき、リペアを依頼した次第です。樋口さんの手によって、低音は深みを増し、よく歌うギターとなりました。

大量生産・消費・廃棄の現代、良いものを長く愛用することの価値を教えていただき、ありがとうございました。
あとは、どれだけギターを歌わせるか、私の腕を磨くだけです。

N.I.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターの音色にご満足頂けて、私も本当に嬉しい気持ちと安心感でいっぱいです。

ギターに限らず、楽器にはそれを製作した人の魂が込められていると思っています。
また年月が経て楽器が古くなっていっても製作者のオーラは翳ることなく、オーナー様の手によって永遠に輝き続けるものだと信じています。

更に今回、リペア後のギターを試奏させていただいている間、オーナーのN.I.さんのギターへの愛情を強く感じた次第です。
これからもN.I.さんの傍らで、ギター達が活躍することを心よりお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


バックボード割れリペア

1.ボディ・バックボード下部分です。トリムが破損してサイド材が見えています。
2.バックボードにも割れが見られ、浮いています。

3.サイド・ライニング(バックとサイドを付けている部分)に浮きが見られたので、そこから接着剤を注入してバック再接着を行います。
4.スプールクランプでバック・サイドを固定し、バックブレイシングをボディ内部からジャッキで、ボディ外側からカムクランプします。

5.バックとサイドが固着した後、バインディングの内側のトリムの残骸を取り除きます。
6.トリム溝がクリーニング出来ました。

7.オリジナルと同じトリムが見つからなかったので、ヘリングボーンを埋めます。
8.ベンディングアイロンでアールを付けました。

9.溝に埋め込み、接着しました。
10.トリム部分にラッカー塗装を施して完了です。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フレット打ち込みの準備が整いました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.カットしたフレット端です。
10.フレットタング部をプライヤーでカットします。

11.バインディング加工後のフレット端です。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.フレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナットはすでに外れていました。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックアップ取り付け

1.オリジナル・エンドピンジャックを取り外しました。
2.新しいピックアップのエンドピンには少し穴径が小さいようです。

3.電動リーマーで穴径を広げます。
4.エンドピンジャックを取り付けました。

5.Fishman RareEarth Blendです。
6.マグネットとコンデンサーマイクのブレンドが絶妙です。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.長年の消耗でガタ・バックラッシュが見られましたので交換します。

3.新しいペグに取り替えます。
4.GOTOH製のペグを取り付けました。