ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-45

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三重県にお住まいのK.A.さんからGibson J-45とVG-030のリペアご依頼をいただきました。Gibson J-45はアジャスタブルサドルのスロット化とフレット交換を含む弦周りのリペアを行いました。

リペア後のギターを受け取られて、K.A.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口英之 様

今回はJ-45、VG-030のリペアありがとうございました。
昨日の夜到着しました。早速ケースから取り出して弾いてみました。

J-45はスロットサドル化にしたことで以前に比べ音量が格段に向上したと思いました。まだまだ若いギターですので、これからしっかりと弾きこんで、このギターの潜在能力を引き出せるように育てていきたいです。

VG-03はJ-45を購入することが出来ずに購入した経緯がありまして、念願のJ-45購入後はあまり弾かれることはなくなっていましたが、今回のリペアにより蘇った音色を聴くと弾かずにはいられません。

これからはこの音質の違う二本のギターの音色を楽しみながら弾き続けていきます。

今回は本当にありがとうございました。また機会があればリペアお願いいたします。

K.A.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。

K.A.さんの仰るとおり、Gibson J-45はアジャスタブルサドルをスロット化することで、弦の振動がボディにダイレクトに伝わるようになり、ボディの鳴りがよりJ-45らしくなったと思いました。これから年月を経ていくことで、もっともっと枯れた素晴らしい音色に変化していくと思います。

またVG-030はリペア前は少し悲しい音色でしたが、リペア後は「どんなもんじゃい!」といっているかのようなJ-45にも負けない音色になって私も驚きました。(VG-030購入の経緯を初めてお聞きしましたが、きっとVGも喜んでいることと信じています)

両ギターともリペア後はボディの響きがネックやペグにまで伝わって、とても気持ちよく試奏させていただきました。
K.A.さんの今後の素晴らしいギターライフをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


アジャスタブル・サドル・スロット化

1.アジャスタブルサドルより少し大きめにローズウッド材を切り出しました。
2.サドルスロット・サイズに合わせてピッタリの楕円柱を切り出しました。

3.埋木の上部をブリッジ面に合わせて切り取ります。
4.ブリッジにマスキングテープを貼り、イントネーターとチューナーを取り付けました。

5.全てのフレットについてピッチを確認し、ずれている場合にはイントネーターのサドル山位置を調整します。
6.ピッチ調整後のサドル山位置をマスキングテープにマーキングしていきます。

7.サドル山位置とサドル溝位置を重ねていたマスキングテープに書き込んでおきます。
8.サドル溝加工ジグを取り付けました。

9.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置を微調整します。
10.サドル溝を掘っています。

サドル溝加工ジグとトリマで溝加工を行っている様子です


11.マスキングテープを剥がします。
12.ジグも取り外し、サドルスロット化ができました。あとはサドル作製を行いましょう。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.削りかすを吸い取り、フレット打ち込みの準備が整いました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フィンガーボード全体に渡ってアールを計測します。
10.第一のフレットプレス・ジグです。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。
24.1弦側のフレット端も同じように整形します。

25.ステンレステープでピックガードをガードします。
26.整形されたフレット端です。

27.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
28.フレットのカット片類は見失わないように一カ所にまとめて捨てましょう。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当てて、コンとたたきます。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サドルピーク位置を記録したマスキングテープと新しいサドルスロットです。
2.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

3.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
4.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

5.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
6.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

7.サドル高の切り出しを終えました。
8.サドル上部にピーク位置を書き写します。

9.サドルピーク位置を削りだしていきます。
10.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

11.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
12.ブリッジピン穴加工を終えました。

13.サドルを取り付けました。
14.完成したオフセットサドルとブリッジです。