ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD JF55-12NT

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神奈川県にお住まいのH.M.さんからGUILDの12弦ギター、JF55-12NTのリペアご依頼をいただきました。
ブリッジ移動が見られましたのでブリッジの脱着と、フレット音痴解消のためにサドル溝再加工、および弦周りのTUSQ化を行いました。

ブリッジ脱着

1.オリジナル状態のブリッジ際です。ブリッジの移動によってトップ板塗装が剥がれかけています。
2.以前にもブリッジ浮きのため、脱着リペアをされたそうです。

3.ラバーヒーターです。これでブリッジを暖めて取り外します。
4.ブリッジの温度をモニタしながらゆっくりと温度を上げていきます。

5.ブリッジが暖まったところで、隙間にナイフを入れていきます。
6.ゆっくりとナイフを挿入していきます。

7.ブリッジが外れました。
8.多量の接着剤が見られます。

9.ブリッジの接着面にも多くの接着剤が見られます。
10.この接着剤の除去から始めましょう。

11.ドライヤーで接着剤を暖めながら少しずつ取り除いていきます。
12.トップ板の接着面が見えてきました。

13.ブリッジ周辺の塗装タッチアップをこの段階で行います。剥がれかけている部分にラッカーを塗りました。
14.盛り上がった部分を安全カミソリで削り取っていきます。

15.ブリッジ際の塗装タッチアップを終えました。
16.ブリッジ再接着の準備完了です。

17.接着面に湯煎したニカワを塗っていきます。
18.全体に塗っていきます。

19.ブリッジをそっと乗せます。
20.クランプした後、溢れたニカワを取り除きます。

21.マスキングテープを剥がしていきます。
22.このまま固着を待ちましょう。

23.固着後のブリッジです。
24.トップ板の塗装浮きはほとんど目立たなくなりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.横にスライドすると外れました。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と11弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル溝加工~サドル製作

1.再接着完了後のブリッジです。
2.フレット音痴がサドル山補正の範囲を超えているので、一旦埋木してサドル溝を掘りなおします。

3.ローズウッド材を切り出してオリジナルサドル溝にはまるように加工しました。
4.サドル溝の埋木を完了しました。

5.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
6.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

7.マスキングテープにサドルピーク位置を書き写しておきます。
8.サドル山位置をサドル幅で囲み、サドル溝目標位置を書き込みます。

9.二重に貼っていたマスキングテープを剥がし、サドル溝位置とサドル山位置に分けます。
10.目標サドル高も記録しておきます。

11.サドル溝加工ジグを取り付けました。
12.トリマのビット先端がサドル溝の中央をなぞるように位置調整します。

13.サドル溝を掘っています。
14.サドル溝加工を終えました。マスキングテープを剥がしています。


15.補正したサドル溝はオリジナル位置よりも約4mmブリッジピン側に移動しました。
16.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

17.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
18.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

19.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
20.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

21.サドル高の切り出しを終えました。
22.サドル上部にピーク位置を書き写します。

23.サドルピーク位置を削りだしていきます。
24.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

25.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
26.ブリッジピン穴加工を終えました。

27.サドルを取り付けました。
28.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ネック塗装タッチアップ

1.ネックヘッド部です。ギターハンガーのラバーに腐食されています。
2.サンドペーパーで腐食部分を削り取りました。

3.スチールウールで研磨しました。
4.コンパウンドで磨き上げました。