ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

K.Country

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兵庫県にお住まいのT.S.さんからK.CountryのDサイズギターリペアご依頼をいただきました。
このギターはT.S.さんが学生時代に購入された想い出深いものだそうです。フレット交換、弦周りのTUSQ化、フィンガーボードの埋木を行いました。
リペア後のギターを引き取りにお越しになり、早速暖かいメッセージをいただきました。

本日は、お忙しい中、丁寧に迎えていただき誠にありがとうございました。

帰宅して、ゆっくりとギターを味わっているのですが、「へぇ、 これがあのギターか」と思うほどの弾きやすさと音色に感激しています。
いずれも、ナットとブリッジ周りのリペアのおかげだと思います。
もちろん、フレットと指板のリペアも完璧で、うまくなったような気がします。

約30年前の、高校1年生の冬休みに、初めてのアルバイトで、初めて買ったギターだけに、思い入れもひとしおです。あの頃は、ギターが弾ければ女子にもてると思っていたのですが(苦笑)

生まれ変わったギターは、これからはライブでのメインにしようと思います。樋口様にリペアをしていただいて、本当によかったと思います。
ありがとうございました。

T.S.さん、こちらこそ早速の暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。
お蔵入りしていたギターが現役復帰なんですね!(笑)。T.S.さんのライブ活動、そしてこれからのギターライフでK.Countryが活躍することをお祈りしております。

この度は弊工房にギターリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。


フィンガーボード・ディボット埋木

1.オリジナル・フィンガーボードです。使い込まれた凹み(ディボット)が見られます。
2.フレットを外しました。(埋木作業はフレット交換と並行して行います)

3.凹み部分に安全カミソリで切り目を入れていきます。
4.フィンガーボードと同じ素材のローズウッドのペーストを凹み部分に流し込みます。

5.フィンガーボードのアール(湾曲度)を測定します。
6.アールにあったブロックにサンドペーパーを付けてペーストを削り取っていきます。

7.サンディングが完了しました。
8.フレットを取り付けた状態です。凹みは完全になくなりました。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.カットしたフレットの端です。

11.フレットタング部をプライヤーでカットします。
12.バインディング加工後のフレット端です。

13.ボディ内フィンガーボードの裏側にブロックがあるため、この部分はフレットを打ち込みます。(プレスはできません)
14.ジャッキでボディ・トップを補強します。

15.フレットの端部分を打ち込みます。
16.最後にフレット中央部分を打ち込みます。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領で打ち込みを進めていきます。
18.ここから先はこのジグを使用して、フレットプレスします。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナットに当て木を当てて軽くコンとたたきます。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。