ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-41

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岐阜県にお住まいのK.A..さんからMorris W-80とMartin D-41のリペアご依頼をいただきました。Martin D-41はフレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、K.A.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター到着いたしました。
手にした印象としましては、マーチンD-41もモーリスW-80どちらもまとまりのある非常に良い音になって かえってきた感じがします。1本1本の音がしっかりとし特にCコードを弾くと唸る感がします。サスティーンが増すと聞いてましたが、なるほどと思いました。

モーリスは、30年程前、高校受験の合格祝いに母親に買ってもらったギターです。
当時はアリスが全盛で「モーリス持てばスーパースターも夢じゃない」と言うキャッチフレーズに影響を受け買ったのを覚えております。 しかし2年前にマーチンを購入したので、実際には、モーリスの方はもう弾かず に置いておこうと思ったギターです。 樋口さんにもったいないと言われ、少し迷いましたがリペアをお願いした甲斐がありました。
マーチンもモーリスも同じドレッドノートタイプのせいか、殆ど同じ様に聞こえます。
弾いていて思わず笑いが込み上げる程です。
どうもいろいろと有難うございました。それでは お身体に気をつけて頑張ってください。

K.A.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。
リペアさせて頂きましたギターの音色にご満足頂けて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
最初ギターを受け取り、K.A.さんから「Morrisはあきらめるかもしれない」と聞かされた時、なんとか復活させたい、という気持ちになりました。
Martin D-41はまだまだ若いギターです。きっと先輩ギターであるMorrisの音色と競うようになるのではないでしょうか?
ますますの素晴らしいギターライフをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナット溝が深いので切削除去します。マスキングテープで周囲を保護しました。

3.ナット除去にはドレメル・ルーターを使用します。
4.ストレートビットとジグを取り付けました。

5.何回かのパスに分けて少しずつナットを除去していきます。
6.2パス目が終わったところです。

7.3パス目が終わりました。もう少し掘り進めましょう。
8.ここで掘り進めるのを止めます。

9.ナットをほぼ削り取りました。
10.残りは簡単に取り除けます。

11.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
12.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

13.クリーニング完了したナット溝です。
14.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

15.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
16.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

17.1弦側からもナットの密着を確認します。
18.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

19.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
20.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

21.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
22.ナット上部をカットしました。

23.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
24.ナットらしくなってきました。

25.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(ナット切削除去する前に記録しておきます)
26.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

27.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
28.弦高調整前のナットです。

29.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
30.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

31.ナット高調整前の弦溝です。
32.弦高調整後のナット弦溝です。

33.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
34.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.完成したオフセットサドルとブリッジです。