ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

K.Yairi YW-1000

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北海道にお住まいのT.S.さんからK.Yairi YW-1000のリペアご依頼をいただきました。フレット交換を含む弦周りのリペア、ピックガード交換を行いました。

リペア後のギターを受け取られてT.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様へ

リペアをお願いしていたギターが届きました。
ケースを開ける前は初めてこのギターを手にした気持ちになりました。

低音、高音のバランスが良くなり「前は高音が少ししょぼくて(・_・;)」
チューニングも合わせやすくなっていましたし、 低音、高音のバランスも気に入りました。
早々と大好きなかぐや姫メドレーを気持ち良く弾きました。
気分は正ヤンです(笑)。

本当に自分のギターなのかと思うほどです。
リペア後のギターに一番、驚いていたのは、 何時も下手くそな演奏を聴かされている妻でした。
「久しぶりの拍手に照れ笑い」 本当に待っていて良かったと実感しています。

ブログで樋口さんが大怪我をした事を知り、リペアの予約待ちの事など忘れ、完全復活を願っていました。
リペアの方は完全復活のようですね。
これからも樋口さんのリペア技術がギターファンに広がる事と、早くギターが弾けるように怪我の回復をお祈りしています。

ありがとうございました。
これからも大事に弾かせてもらいます。

北海道
T.S.

T.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

ギターが無事お手元に届いたとのことをお聞きして、また、ギターの音色にご満足いただけたとのこと、安心と共にとても嬉しい気持ちになりました。長い期間お待ちいただき、本当にありがとうございました。

多分、T.S.さんのギターも照れ笑いしていたのではないでしょうか?(笑)
幸せなご夫婦の姿が目に浮かびます。そして、幸せなギターの姿も・・・(笑)。
これからも素晴らしい人生を、奥様とギターと一緒に過ごされてください。

> これからも樋口さんのリペア技術がギターファンに広がる事と早くギターが弾けるように怪我の回復をお祈りしています。

とても暖かいお心遣いをいただき、本当にありがとうございます。
ご期待に添えますよう、日々精進していきたいと思う次第です。
怪我の方も順調に回復しております。私もギターと妻と一緒に人生を謳歌したいと思っています(笑)。

この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フレットタング部をプライヤーでカットします。

11.バインディング加工後のフレット端です。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.フレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナットに当て木を当てて軽くコンとたたきます。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックガード交換

1.オリジナルピックガードを剥がしていきます。
2.ボディトップを傷つけないように周囲からナイフを挿入していきます。

3.ピックガードが取り外せました。
4.右上はピックガードのロゴに重なるようにはられている銀紙です。

5.両面粘着材が多めに貼られています。
6.徐々に粘着材を剥がしていきます。

7.粘着材を取り除きました。
8.オリジナルピックガードより少し大きめにTOR-TIS素材を切り出しました。

9.両面テープで2枚を仮付けします。
10.はみ出した部分を削っていきます。

11.TOR-TIS素材は常温では硬く、もろい性質なので割れないように少しずつ削っていきます。
12.両面シートを新しいピックガードに貼り、周囲をカットします。

13.クランプ・マグネットで仮止めした状態で位置決めし、マスキングテープでマークします。
14.ピックガード交換完了です。ギターの表情が変わりました(笑)。


ペグ交換

1.オリジナル・ペグです。ガタ(バックラッシュ)がありますので、同じタイプのものと交換します。
2.ペグを取り外しました。

3.新しいペグを取り付けています。
4.スムーズかつ、安定したチューニングが行えるようになりました。