ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Tahara Jumbo J-35

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兵庫県にお住まいのT.S.さんから田原 Jumbo J-35のリペアご依頼をいただきました。フレット交換、弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、T.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

先日来、お世話になりました。

ギターを引き取り後、持ち帰り早速、弾いてみました。
TUSQ化の威力については事前に自分で試していたので、驚きは少なかったのですが、ロングサドルの影響か?ボリュームがすごく上がって、全体のバランスがとても良くなりくフィンガーが上手く聞こえます。
少しフィンガーのレベルを上げて見たくなった次第です。

ストロークでジャカジャカやるとうるさく感じるくらいでちょっと戸惑いがあります。腕前がギターに置いていかれた感じでしょうか? あえて表現するなら「良くなった。」ではなく「悪いところが無くなった。」のほうが当てはまるように思います。

37年もいっしょに居る奴なので購入金額以上を掛けて気合を注入しました。これからも末永く付き合っていきたいと思います。

とにかく弾きやすさ、仕事の綺麗さには感服いたしました。またご縁があればお願いしたいと思います。

T.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。 音色、演奏性共にご満足頂き、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

T.S.さんのおっしゃる通り、J-35は現役復帰したのではないかと思います。
ストロークプレイでビビリ発生ギリギリの弦高調整をしましたので、フィンガーピッキング演奏にも充分使用可能かと思います。
また音色の改善の要因はロングサドルによるものが大きいと思います。

人生の半分以上の時間を一緒に歩いてきたJ-35とこれからも素晴らしいギターライフを送ってください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードのクリーニングが終わり、プレスの準備ができました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.ネックブロックが大きいため、この部分にはフレットプレスジグが使えません。
10.フレット打ち込みを行うため、ジャッキを固定しました。

11.フレットの端を打ち込みます。
12.反対側も打ち込みます。

13.最後に真ん中を打ち込んでいきます。
14.フレットプレスジグにフィンガーボードのアールにあったビットを取り付けます。

15.ジグを取り付けました。
16.ネジを回してフレットをプレスします。

17.均等にフレットがプレスされるように3つのネジを回していきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。

21.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
22.カットしたフレット片は見失わないように一カ所にまとめておきましょう。

23.カットしたフレット端です。
24.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。

25.1弦側のフレット端も同じように整形します。
26.整形されたフレット端です。

27.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
28.ボディもアクリル板でカバーしました。

29.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
30.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

31.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
32.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

33.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
34.最後はコンパウンドで磨き上げます。

35.プロテクタ類を外しましょう。
36.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. ナットはすでに外れかかっておりました。
2.ナットが外れました。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。

ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝にピッタリはまるようにスラブを加工しました。

5.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
6.サドル高の切り出しを終えました。

7.サドル上部にピーク位置を書き写します。
8.サドルピーク位置を削りだしていきます。

9.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
10.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

11.ロングサドルのスロープ加工をしましょう。
12.まず半丸ヤスリで粗くスロープを削り出します。

13.マスキングテープでブリッジを保護して、ミニルーターで徐々にスロープを削りだしていきます。
14.スロープ加工完了です。

15.両サイドともスロープ加工を終えました。
16.完成したロングサドルです。