ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA L-8

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大阪府にお住まいのI.F.さんからYAMAHA L-8のリペアご依頼をいただきました。フレット交換を含む弦周りのリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られてI.F.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギターが無事に届き、早速弾かせてもらいました。

音量は確実に増し、アルペジオでも強くつまびかなくても充分な音量がでます。
新弦なのでまだはっきりとは言えませんが、物足りなさを感じていた6弦もしっかり鳴っていると感じます。そして高音の伸びがとても良くなりました。
弦高は元のネックの状態もあってか、低いとは思いませんが演奏上ストレスを感じることなく押さえやすいです。
仕上げの面ではブリッジピンが綺麗に収まっており、フレットピカピカ、指板もサンディングしていただいたことで、フラットな感じに戻ってここだけ見たら新品のギターみたいです。

買ってからもう26年。本来このくらい鳴るギターなんだろうなというのが、率直な感想です。
このギターを弾くのが楽しみになりそうです。ボディのお色直しをする決心が固まりました。この度は本当にありがとうございました。

I.F.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。 リペア後の音色と演奏性にご満足いただけたとのことをお聞きして、私もとても嬉しい気持ちです。
ネックの元起きが見られましたが、サドル高は限界まで下げさせていただきましたので、通常の演奏には問題ない弦高になったかと思います。
I.F.さんの今後のご活躍の傍らにL-8がいることをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードのクリーニングが終わり、プレスの準備ができました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.第一のフレットプレス・ジグです。
10.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

11.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
12.バインディング加工前のフレット端です。

13.フレット端を専用のプライヤでバインディング加工します。
14.タング部をカットしたフレット端です。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.フレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定し、ネジを締めてフレットをプレスします。

19.順にプレスを進めていきます。
20.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。

21.最後のフレットのプレスが終わりました。
22.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。

23.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
24.カットしたフレット片は見失わないように一カ所にまとめておきましょう。

25.カットしたフレット端です。
26.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。

27.1弦側のフレット端も同じように整形します。
28.整形されたフレット端です。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. ナットはすでに外れかかっておりました。
2.ナットが外れました。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.フレットを6弦側から見た様子です。
26.少し削って、隙間を確認します。

27.6弦のナット高をギリギリまで下げました。
28.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。