ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-45

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大阪府にお住まいのY.O.さんからJAGARD、Gibson J-45、Thompson TM1のギター3本のリペアご依頼をいただきました。 (Y.O.さんからは以前Martin HD-28Vのリペアご依頼をいただいており、これで2回目、のべ4本のギターリペアご依頼となります。Y.O.さん、ありがとうございました)
Gibson J-45はフレット交換を含む弦周りのリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、Y.O.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口英之 様

お世話になります。
先ほどギターを受け取りました。
この度は3本まとめてということでお願いいたしましたが、どれもすばらしいリペアをしていただいたと感謝しております。
ありがとうございました。

Thompsonはもともと気に入った音色ではあったのですが、もう一息、良い音にならないかと思っておりました。
今回ナット、サドルを交換していただいて、芯がありつつも、より軽やかな澄んだ音になったと感じております。サスティーンも一段と長くなりました。

Gibson J-45は、ギターを見ていただいた際の樋口様のご指摘にありましたようにこもった感じの音で、いわゆる”ドン”、”シャリ”感があまり感じられませんでした。
ナット、サドルの材質や木製のエンドピン等の影響があったからでしょうか。
今回、TUSQに交換して驚くほど音が出てくるようになっておりました。
また、フレット打ち直しで変なひっかかりも解消されました。

最後にJAGARDですが、これにはビックリ!しました。約30年前に初めて購入したギターで、フレットも凹み、我流の調整(の失敗!)でサドルを削りすぎたりして、ハイフレットではビビルし全体的にも”ペンペン”という感じの音しか出ないようになっておりました。
愛着はあるものの、正直、音のひどさに1分も弾くと嫌になるような代物でした。

ホームページに掲載された丁寧な仕事ぶりを拝見して、また実物を手にして、良いリペアをしていただくとギターはこれ程までに蘇るものなのかという思いを抱いております。
(これまでこのギターでは感じたことのない振動が胴体から伝わってきて、おそらく今までで最高の音をだしているんじゃないかと感じています)

最後になりましたが、今回も本当に樋口様にお願いして良かったと思っております。
改めて、ギターのリペア、調整の大切さを知らされました。
またきっとお願いすると思います。その節はよろしくお願いします。
樋口様の今後のますますのご活躍、ご健勝をお祈りしております。

Y.O.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。
文面からY.O.さんのギターに対するとても熱い情熱が伝わって参りました。

今回お預かりさせて頂いた3本のギターはどれもとても個性的で、別の楽器のようでした(笑)。
リペア前はおっしゃるとおり、何か悲しげな音色でしたが、リペア後の音色にご満足頂いて私もとても嬉しい気持ちで一杯です。
特にJAGARDは弦周りのトータルリペアを行うことで、しっかりとした音色を奏でるようになって、バッチリ復活できたのではないかと思います。

これからもY.O>さんが素晴らしいギターライフを過ごされるよう、心より応援しております。
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.第一のフレットプレス・ジグです。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。

25.1弦側のフレット端も同じように整形します。
26.整形されたフレット端です。

27.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
28.フレットのカット片類は見失わないように一カ所にまとめて捨てましょう。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらに研磨タワシ(#600~#800)で研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. 当て木を当てて、軽くコンとたたきます。
2.ナットが取り外せました。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.6弦のナット高をギリギリまで下げました。
24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.完成したオフセットサドルとブリッジです。