ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin O-17

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京都府にお住まいのT.K.さんからMartin O-17のリペアご依頼をいただきました。弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られてT.K.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様
京都市のT.K.です。
本日、O-17を受け取りました。
早速、自宅で弾いてみました。

古くて状態の良くないギターゆえに色々と改善すべき点が多々あるにも関わらず、私の予算の都合で制限あるリペア内容での作業をお願いしてしまう形になり、せっかくリペア後のイメージプランニングまで樋口様に提示いただいたのに依頼主としては申し訳ない気持ちです・・・。

ですが、
制限されたリペアなのに戻ってきたギターは私を納得させてくれる音色で鳴ってくれました。
ギター人生で初のTUSQ化も、実際に舞台で弾けば正解だと感じるはずだと思います(翌日、使用予定です)。

私の演奏スタイル上、静寂の中で音数を減らして弾きながら歌う場面が多いのですが、これなら今まで抱いていたこの個体への疑問も解消され、たっぷり気持ちを込めて弾いていけると思います。

過去、他店に預けて悲しい想いをしてきたギターなので本当に感謝しております。
感謝のあまり京都から神戸に向かって頭を下げてしてしまいました(笑)。

これから先もいろんなギターを救ってあげてください。
ありがとうございました。

T.K.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。
リペア後のギターの音色にご満足頂けて、とても安心しました。
また今回リペアをさせていただいて、1940年代のMartinの潜在能力やその強いオーラを再認識させて頂いた次第です。
きっとこれまでいろいろなオーナーさん達の手を渡って来たんだなと思うと、感慨深くなってしまいました。
これからもO-17と共に素晴らしい演奏を続けていってください。

この度は弊工房にリペアのご依頼を賜りありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


ナット交換

1. 当て木を当てて、コンとたたいて取り外します。
2.ナットが取り外せました。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.5弦のナット高をギリギリまで下げました。
24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ロングサドルのサイドスロープ加工を行います。まう、粗く削り出しました。

13.マスキングテープでブリッジを保護します。
14.ルータに円錐ビットを取り付けて少しずつ削っていきます。

15.スロープも削り上がりました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。