ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-50

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愛知県にお住まいのS.N.さんからMorris W-50とGibson J-45のリペアご依頼をいただきました。
Morris W-50は、フレット交換、ブリッジプレート・リペアを含むトータルリペアを行いました。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.第一のフレットプレス・ジグです。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらに研磨タワシ(#600~#800)で研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、位置決めのためにポンチで凹みを入れています。
4.位置決めされたプラグの中央に小穴を開けます。

5.小穴があいたプラグです。まだ、メイプルド材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工が終わった様子です。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1. ナットはすでに取り外されていました。古い接着剤の跡が薄く残っています。
2.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

3.クリーニング完了したナット溝です。
4.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

5.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
6.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

7.1弦側からもナットの密着を確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.6弦のナット高をギリギリまで下げました。
22.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックガード脱着

1.リペア前のピックガードです。
2.ブリッジ側にずれていますので、まずフィンガーボード側からナイフを挿入します。(トップ板を傷つけないように注意します)

3.トップ板塗装に影響のない粘着除去材をナイフに塗りながら作業しました。
4.ピックガードが外れました。トップ板側に粘着材が残っています。

5.粘着材を取り除きました。
6.ピックガード裏側もクリーニングしました。

7.ピックガードの位置決めを行います。真ん中に乗っているのはリペア用の強力マグネットです。これを使ってピックガードが簡単には移動しないようにしておきます。
8.ピックガードよりも少し大きめに両面接着シートを切り、片面を貼り付けた後、周囲をカッターで切り取っていきます。

9.ピックガード脱着完了です。
10.周囲もきれいになりました。


トップ板タッチアップ

1.リペア前の傷の様子です。生木地が露出したまま、かなりの年月が経過しており、周囲に黒ずみが見えています。
2.サンドペーパーを細く切って軽くサンディングします。(この時点で黒ずみがかなり深くまで進行していることがわかりました)

3.単色系のシェラックニス(スーパーブロンズ)で木地をコーティングします。
4.ステインを調合し、最も近い色を作ります。

5.ステインは一旦乾燥させ、色調を確認した上でラッカーに溶いて塗ります。
6.着色を完了しました。

7.クリアラッカーを重ね塗りして、完全に乾燥したら水研磨を行います。
8.木地をカバーするだけのタッチアップとなりました。