ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA LL-33J

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兵庫県にお住まいのR.OさんからYAMAHA LL-33Jのリペアご依頼を頂きました。ボディサイド埋め込み型プリアンプの取り付けと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、早速R.O.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口英之様

この度は、本当にありがとうございました。

修理と言うよりも、ボディの横腹に大きな穴を開けると言う冒険的な改造でしたが、さすがです。待った甲斐がありました。
サイドに大きな穴を開けてプリアンプを取り付ける限り、少なからず生の音は悪くなると覚悟していましたが、併せて行って頂いた、弦周りのTUSQ化の効果なのか、まったく気になりませんでした。
逆に良くなった様な気がします。
あれから家に帰って、気持ちの問題かと思いながら、弾いてみましたが、やはり修理前より音が良く出ています。
どう表現したら良いのか分かりませんが、同じ強さで弦を弾いているのに、共鳴して、大きな音が出るようになったというか、音がいつまでも響き続けるみたいな感じです。
純正のナット/サドルは樹脂製でしたが、TUSQにしたことで弦の振動がダイレクトにボディを響かせているようですね。

サイドの穴開けは初めてで、ジャンクギターでかなり練習されたと言うことで、本当お手数をお掛けしました。
樋口様の目標であるオリジナルギター製作の技術に活かして下さい。
私も、このギターに負けない様に練習に励みたいと思います。
あと、ちょっとしたことで音が良くなるって感動もんなので、私もウクレレの製作にも挑戦してみようかと思います。(笑)

また、リペアファイルのコーナーに作業内容を写真付で掲載して頂けたので、どういう作業だったか把握できるのも、安心してお願い出来る理由かと思います。
外国製の高価なギターではありませんが、私にとっては愛器ですので、安心して預けられるところに、お願い出来て本当に良かったです。

本当にありがとうございました。
今後のご活躍を陰ながら祈っております。

R.O.さん、とても力づけられるメッセージを頂き、本当にありがとうございました。

おっしゃるとおり、今回はリペアと改造の二段階に分かれる作業でした。一段階目のリペア後のギターの音色は非常に素晴らしいものだったので、二段階目のボディに穴を空けることで、どの程度音響特性が低下するのか心配でした。でも、ピックアップとプリアンプを取り付けた後も、横穴の影響はほとんど無いことがわかり、本当にホッとしました。
また、おかげさまでサイドの穴あけはエキスパート(?)になったかもしれません(笑)。サイドに横穴のたくさん空いたジャンクギターは記念に残しておこうと思っています。
ウクレレ製作も楽しんでください。応援しています!

この度は弊工房にリペア・改造のご依頼を頂き、誠にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い致します。


フレットすりあわせ

1.まず、マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングし、平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.ナットに当て木を当ててコンとたたくと・・・
2.ナットが取り外せました。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットができあがりました。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.6弦のナット高をギリギリまで下げました。
24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックアップ・プリアンプ取り付け(ボディサイド穴加工)

1.プリアンプ取り付け位置にマスキングテープを貼ります。
2.穴空け位置に寸法線を書き込みました。

3.四隅にドリルで穴を空けます。(2.5mm径です)
4.四辺はルーターでカットするので、ガイド用のクランプをボディに固定しました。

5.ドレメル・ルータにストレートビット(1.8mm径)とスライドジグを取り付けました。
6.四辺のドリル穴からボディ・サイドをカットしていきます。

7.大穴が空きました。
8.目標サイズよりも小さめに空けたので、残りはヤスリで削っていきます。このとき、力を入れすぎるとサイド材が割れますので、要注意です。

9.プリアンプ固定用の穴も空け、ボディサイド加工完了です。
10.ピックアップはブリッジプレートとアンダーサドルの両方に取り付け、ピックアップでミックスします。

11.ピックアップを接続し、プリアンプを固定して完了です。
12.別角度からの撮影です。