ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA L-31A

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大阪府にお住まいのT.K.さんからYAMAHA L-31Aのリペアご依頼をいただきました。(T.K.さんからMartin D-35Martin D-41プチリペアに引き続き、3本目のリペアとなります)
リペア後のギターをお引き取りこられた後、T.K.さんから早速暖かいメッセージが届きました。T.K.さんありがとうございました。

この度はありがとうございました。

前回のD-35の時と同様に愛機の変貌ぶりにただただ驚いております。
樋口師匠(そう呼ばせて下さい)の手にかかれば寝てる子も飛び起きるのですね。ある意味大ショックです。

正直このギターはD-35とは違い、ずっと使い込んできたギターではなく、YAMAHAのギターが欲しくて昨年中古購入しましたが期待したほど鳴りませんでした。
素質はある!と思い、あれやこれやといじり倒しましたがいまいち???でした。
自力調整ではどうしても引き出せなかったサウンドが出て、とても満足しています。

さすがプロの仕事です。
また、私の要望を取り入れた特殊調整もしていただきありがとうございます。
なんか自分だけに造られたカスタムギターになったような気もします。

重ね重ね御礼申し上げます。

L-31AでT.K.さんが試奏された時、本当にすごい音になったぁ、と感無量でした。
これからもL-31AがT.K.さんの傍らで活躍することをお祈りしております。
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.サンディング後のフィンガーボードです。フレット溝が削り粉で埋まってしまいました。
6.削り粉をクリーニングします。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フレットの切れ端はこのようになっています。バインディング処理を行いましょう。

11.フレットのタング部分専用のプライヤーを使って端加工処理します。
12.バインディング加工を終えたフレット端です。

13.フレットプレスを行うジグ達です。
14.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

15.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
16.第一のフレットプレス・ジグです。

17.ジグをサウンドホールから入れていきます。
18.フレットをプレスします。

19.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
20.2つ目のジグはこのように固定します。

21.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
22.均一な圧力でプレスされるようにネジの締め具合を調整します。

23.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
24.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

25.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
26.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

27.フレット端をカットしました。
28.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

29.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
30.6弦側のフレット端も同じように整形します。

31.フレット端を整形しました。
32.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

33.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
34.ボディもアクリル板でカバーしました。

35.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
36.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

37.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
38.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

39.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
40.最後はコンパウンドで磨き上げます。

41.プロテクタ類を外しましょう。
42.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
2.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

3.クリーニング完了したナット溝です。
4.ここでバインディングの浮きが見つかりましたので、接着しました。

5.クランプをして固着を待ちます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.ナットの厚みを出し、ナット取り付け位置に密着することを確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
10.ナット上部を切り取りました。

11.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
12.ナットらしくなってきました。

13.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
14.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。(今回は、T.K.さんのご要望により、1弦位置を固定し、6弦側の弦幅を広げるように設定しました)

15.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
16.弦高調整前のナットができあがりました。

17.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
18.ストリングリフターで弦を待避させておきます。このジグのおかげで弦を緩めたり張ったりすることが必要なくなりました。

19.ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。
20.6弦のナット高をギリギリまで下げました。他の弦も同じ要領で調整します。

21.弦高調整の完了したナットです。

サドル溝再加工

1.オリジナル状態のサドル溝です。底面の平面性を確保するためと音響効果向上を図って、サドル溝の再加工を行うことにしました。
2.こちらもオリジナル状態のサドル溝です。溝の端隅(丸まっている部分)が曲面に消耗変形していることがわかります。この状態ではサドルとブリッジの密着性確保は難しいと思われます。

3.サドル加工ジグを取り付けました。
4.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置決めを行います。

5.トリマでサドル溝を整形します。今回は溝の深さも適正な深さまで掘り込みました。
6.サドル溝を掘っているトリマのビット先端の様子です。

7.溝加工後のサドル溝の様子です。底面がきれいな平面になりました。
8.溝のコーナーも壁面と底面が削り出せました。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。