ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Chaki W-2F

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静岡県にお住まいのK.S.さんからChaki W-2Fのリペアご依頼をいただきました。このギターはK.Sさんのご友人から譲り受けられたものです。
リペア後のギターを受け取られて、K.S.さんから暖かいメッセージが届きました。 K.S.さん、ありがとうございました。
素晴らしいギターライフをChakiとともに送られることをお祈りしております。
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。 また、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

ギターを受け取りました。
このギターは知人が茶木の職人さんから30数年前にプレゼントとして頂いた物ですが、10年近く物置に眠っていて廃棄される予定でした。私が譲り受けた時には6弦の大きな鳴りしか確認できませんでしたがポテンシャルを知りたくなり、ジャンクから再生しようと静岡付近のリペアーショップに問い合わせましたが引き受けてくれる方はいませんでした。ネットで樋口様の事を知り無理と思いつつギターをお送りしましたが、先日本器の音色を聴く事が出来ました。
 1977年購入のS.Yairi YD302との弾き比べを行いましたが、高音と低音それぞれ個性があり曲により弾き分ける楽しさが増えました。
ギターケースも新しい物を新調する予定です。
リペアー開始までの期間長かったですが、その間いろいろとChakiの研究ができて楽しかったです。
ギターの音色を最大限発揮できるまで付き合っていきたいと思います。


1. はんだごてでフレットを暖めながらフレットを抜いていきます。
2. フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。

3. 根気よく、ゆっくりと抜いていきます。
4. この要領でフレットを抜いていきましょう。

5. 全フレットを抜き終えました。
6.フィンガーボードが弦方向に直線であることを確かめておきます。

7. フィンガーボードを軽くサンディングします。
8. フレット溝に入ったサンディングの粉を取り除きます。

9.フレットの準備です。フレットワイヤーにアールをつけていきます。
10.フィンガーボードの湾曲度を測定します。

11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
12.カットした後のフレット端はこのようになっています。バインディング処理を行いましょう。

13.バインディング処理専用のカッターでフレット端を処理します。
14.バインディング処理後のフレット端です。

15.カット片は行方不明にならないように一カ所に確実に集めておきます。
16.フレットプレスジグ(その1)です。

17.フィンガーボードのアールに合った先端ビットを取り付けます。
18.フレットにジグを軽く乗せます。

19.クランプの要領でプレスを行うと、フレットが溝に埋め込まれていきます。
20. ネックとボディの接合部分付近までこのジグでプレスします。

21.次のジグです。ネックとボディの接合部分のフレットをプレスします。
22.ネジを締めてプレスを行います。

23.残りのフレットはこのジグでプレスします。
24.すべてのフレットを打ち終えました。

25.フィンガーボードからはみ出したフレットを切り取ります。このとき、切れ端を失わないように、指で受け止めます。
26.フレット端の整形を行います。専用のヤスリで端を削っていきます。

27.反対側(1弦側)も同じようにフレット端の傾斜面をつけていきます。
28.さらにフレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取って行きます。

29.フレットすりあわせを始めましょう。まずは、マスキングテープとアクリル板でフィンガーボードとボディを保護します。
30.すりあわせ準備完了です。

31.すりあわせ部分を特定するために直定規を当てて、凹んでいる部分に赤ペンでマークを入れていきます。
32.マーク部分がすれるまでフラットファイルでフレットを削っていきます。

33.フレット山の断面が台形になっていますので、逆U字になるよう、専用のファイルで削ります。
34.サンドペーパー(#400)で粗研磨します。

35.研磨たわし(#600)で中研磨を行い・・・。
36.さらに研磨たわし(#800)で細研磨を行います。

37.最後はコンパウンドで最終研磨です。
38.フレットすりあわせは完了しました。アクリル板、マスキングテープをはずします。

39.ピカピカのフレットはギターのよみがえりのサインみたいですね。

ナット作製

1.ナットを外しました。古い接着剤の跡が薄く残っています。
2.まず最初にナット溝をクリーニングしましょう。よく切れる彫刻刀で古い接着剤などを削り落としていきます。

3.ナット溝のクリーニング完了です。
4.TUSQナット・スラブをネックの幅に合わせて切り出します。

5.ネックに密着するよう、ナットの底面側面処理を行います。
6.ナット位置にピッタリはまるように加工できました。

7.逆光を使って隙間がないことを確認します。
8.次に上面の切り出しを行います。ケガキ線を入れた後、カットします。

9.ヘッド側に放物曲面を削り込みます。と同時に、サイドの幅も合わせ込みます。
10.弦溝位置を専用の定規でマーキングします。(オリジナルナットに弦溝位置を合わせます)

11.弦溝専用のヤスリで浅めに弦溝を掘っていきます。後で行う弦高調整しろを残す程度の深さにとどめておきます。(写真がピンぼけで申し訳ありません)
12.弦高調整前のナットの完成です。


ブリッジ脱着~サドル作製

1.リペア前のブリッジです。ボディから剥がれかけているので、脱着することにしました。
2.輻射熱を防ぐために周辺にカバーをしておきます。

3.ラバーヒーターを使ってブリッジを暖めます。
4.スポット温度計でモニタしながら温度を上げていきます。

5.ブリッジが暖かい間にブリッジの接着面にナイフを差し込んでいきます。
6.ブリッジが外れました。

7.ブリッジとボディの接触面をクリーニングしました。
8.ボディ内にはこのジグを使います。アクリル板です。

9.厚いアクリル板をブリッジプレートの上に運んでいきます。
10.電子レンジで数秒間チンしたブリッジの裏にHideGlue(ニカワ)を塗ります。

11.元の位置に軽く乗せます。
12.クランプで固定した後、あふれた接着剤をふき取っていきます。

13.サイドのネジを締めてブリッジを固定させます。ボディ内部にはアクリル板ジグで固定されています。
14.接着剤はきれいにふき取っておきます。

15.このまま固着を待ちましょう。
16.数日後、クランプを外しました。サドル溝底面がU字型に丸くなっているので、平面に整形します。

17.トリマの刃がサドル溝をたどるように、ガイドを微調整します。
18.切削加工中です。全神経をトリマの先端に集中します。

19.切削加工が終了しました。。
20.引き続いてブリッジピン穴加工を行います。まず糸鋸の刃で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

21.糸鋸加工が終わったブリッジです。
22.その溝をミニルータで削っていきます。弦が最もサドルにテンションを与えるようなスロープをつけていきます。

23.ピン穴加工も完了しました。次はサドル作製です。
24.イントネーターとチューナーを取り付けました。

25.全フレットにわたって最適なサドル山位置をイントネーターで調整していきます。
26.サドルピーク位置を記録しておきます。

27.TUSQサドルスラブをサドル溝に合わせて切り出します。
28.サドル底面の平面を出します。

29.目標弦高に合わせてサドルを切り出しました。
30.サドルピーク位置をサドル上面に書き写します。

31.サドル山を削りだしていきます。
32.ブリッジとサドルが完成しました。


ボディ内部リペア

1.ブレイシングが一つはずれています。
2.接着完了したブレイシングです。

3.隙間から光が入っています。
4.内部を照らしました。サイドとバックの接着部分から光が漏れています。

5.もう一カ所光が見えます。
6.こちらはサイドとトップ板の接着部分からです。

7.スプルース板を加工して穴を埋めることにしました。
8.適当な大きさに切り出しました。

9.隙間を埋める厚みに削っていきます。
10.バックボード側の隙間に埋木を行い・・・

11.カットしました。
12.トップ板との隙間も、こちら側と・・・

13.こちら側に埋木して・・・
14.隙間を埋めることができました。ボディ内部の片手作業はとても時間がかかりました。(手がつりそうになりました・・・汗!)


ボディ研磨

1.研磨前のボディです。長年の汚れがたまっているようです。
2.オレンジオイルで汚れを落としました。

3.さらにコンパウンドで磨きました。
4.この要領でボディ全体を磨きました。

5.汚れを落とし・・・
6.磨き上げました。


弦高調整

1.2フレットを指で押さえて、1フレットと弦がぎりぎりまで近づくようにナット高を調整します。
2.ストリングリフターで弦を待避しておきます。

3.弦溝専用ヤスリで少しずつ溝を深く掘っていきます。このときも弦とナットの接触イメージをしながら作業を進めます。
4.もう少し、というところで止めておきます。

5.ナットを溝に接着した後、最終調整してナットの完成です。
6.サドルも弦高調整を終えました。