ギター工房オデッセイ
Odyssey Guitar Craft
Martin D-28
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兵庫県にお住まいのJ.K.さんからいただいた3本のギターリペア、2本目はMartin D-28です。
フレット交換、ネック調整、弦周りのTUSQ化を行いました。また、バックボード・バインディングのはがれもありましたので補修を行いました。
リペア後は音色、弾きやすさ共に最高のコンディションになりました。
フレット交換
1. フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
2. フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。
3.フレットを抜き終わるまで全神経をフレットに集中させます。
4.全フレットを抜き終えました。
5.全フレットを抜き終えた後、直定規を当てて、フィンガーボードの平面を確認します。
6.軽くサンディングします。
7.溝に残った削り粉やゴミなどをかき出していきます。このときもフレット溝を傷つけないように注意します。
8.クリーニングの終わったフィンガーボードです。
9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
11.フィンガーボードのアール（湾曲度）をゲージで確認します。
12.フレットプレスジグ（その1）です。ボディ上のフレットをプレスします。
13.アールに合致したプレスビットを取り付けます。
14.フレットをビットに合わせてジグを固定した後、プレスを行います。
15.この要領でプレスしていきましょう。
16.フレットプレスジグ（その2）です。ネックジョイント部を中心としたフレットをプレスします。
17.このジグはネジを締めることによってフレットプレスを行います。
18.プレスジグ（その3）です。ネックジョイント部よりもローフレット側をプレスします。
19.すべてのフレットを打ち終えました。
20.打ち込み直後のフレット端はこのように飛び出ています。
21.飛び出た部分をカットします。このときカット片を失わないように確実に指で受けるようにします。
22.カットしたフレット端です。
23. 専用のヤスリでフレット端を斜めに整形していきます。
24. 反対側（1弦側）も同じようにファイリングしていきます。
25. 整形されたフレット端です。
26.さらにフレットエンド専用のヤスリで切削角を取り除いていきます。
27. このヤスリは側面だけがヤスリ面になっており、フィンガーボードがバインディングを傷つけないようになっています。
28. フィンガーボードをマスキングテープで保護します。
29. フレットだけをのぞかせてギターを保護しました
30. 直定規を当てて凹んだフレット山にマーキングしていきます。
31.マーキングした凹んでいる部分がすれるように、フレット山をすりあわせていきます。
32.台形になったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
33.サンドペーパー（#400）で粗研磨します。
34.研磨タワシ(#600)でさらに研磨し・・・。
35.さらに細かい研磨タワシ(#800)で研磨していきます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げていきます。
37.ギターを保護していたアクリル板とマスキングテープをはがしましょう。
38.ピカピカのフレットです。いい音の予感を感じさせてくれます。
ナット交換
1.オリジナルナットをはずしました。多めの接着剤が塗られています。
2.よく研いだ彫刻刀で接着剤の層を削っていきます。
3.ナット溝のクリーニングが終わりました。
4.ネック幅に合わせてTUSQナットスラブを切り出します。
5.ナット溝にフィットするよう、ナット・スラブを加工していきます。
6.ナットとネック、フィンガーボードの密着度には十分時間をかけます。ここが良い音色になる大きなポイントです。
7.逆光を利用すると効率的に隙間を見ることができます。
8.フレットに合わせてナット切り取りケガキ線を入れます。
9.ナット上部をカットしました。
10.さらにヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
11.ナットらしくなってきました。
12.オリジナルナットの弦溝位置を専用の定規で読みとります。
13.読みとった弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
14.専用のヤスリで弦溝を掘っていきます。弦高調整しろを残して、少し高めで止めておきます。
15.弦高調整前のナットが完成しました。弦を張って、弦高調整（ナット高調整）に移りましょう。
16.弦の2フレットを押さえて1フレットと弦の隙間がなくなるようにナット弦溝を掘り下げていきます。
17.ストリングリフターで弦を一旦待避しておきます。
18.弦溝加工専用のヤスリで徐々に溝を掘り下げます。確認～掘り下げの作業を数回から十数回繰り返します。
19.ぎりぎりまでナット高を下げました。このとき、1フレットの上から指でコンコンと弦をたたくと、クリック音が出ればOKです。
20.同じ要領ですべての弦のナット高調整を終えました。
サドル作製～ブリッジピン穴加工
1.イントネータとチューナを取り付けます。
2.ピッチ調整を行います。ピッチが合わない場合は、イントネータのサドル山位置をずらして再度ピッチ確認を行います。
3.サドルピーク位置と算出された目標サドル高をメモしておきます。
4.サドル溝に合わせてTUSQサドル・スラブを切り出します。
5.ぴったり溝にはまるようになりました。
6.サドルとブリッジの密着性は良い音色のギターの条件です。
7.先ほど算出したサドル高にあわせてサドル・スラブを切り出しました。
8.サドル上面にピッチ調整で確認したピーク位置を書き写します。
9.ピーク位置に合わせてオフセットをつけながらサドル山を削りだしていきます。
10.オフセット・サドルが完成しました。
11.引き続いてブリッジピン穴加工を行います。
12.弦導出口をサドル側へ糸鋸で引き寄せます。
13.糸鋸加工を終えたブリッジです。
14.さらにミニルーターで溝を太く、導出角度をつけていきます。
15.ピン穴加工を終えました。
16.弦を張りました。
バインディング剥がれリペア
1.バックボード6弦側のバインディングです。
2.接着剤の注入スペースを確認します。
3.ギター製作時に使用するバインディング固定用のゴムを使用します。
4.接着剤を剥がれ部分に塗ったあと、素早くゴムを張ります。
5.別角度から見た写真です。ゴムが均一な力でバインディングを押さえるように張ります。
6.固着完了後のバインディングです。
7.1弦側のバインディングも剥がれています。
8.こちらは広い範囲で剥がれています。
9.6弦側と同じ要領で接着しています。
10.こちらもバインディング固着完了しました。