ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAKI R-60

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埼玉県にお住まいのA.K.さんからYAMAKI R-60のリペアご依頼をいただきました。
A.K.さんは「古き良きもの」を愛される方です。このYAMAKIも30年以上前のビンテージギターです。
今回はフレット交換、ブリッジ周辺のリペアなどを行いました。リペア後のギターを受け取られて、A.K.さんから暖かいメッセージをいただきました。
A.K.さん、ありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

リペア頂きありがとうございました。
ブログからのリペアの進捗を見て、完了を楽しみにしていました。
完了、到着後、早速、こいつをケースから取り出し弾いてやりました。

ケースから取り出した瞬間、ローズの甘い香りに包まれ、何本か所有するギターの中で、これほどまでに、弾く前から香りを放って奏者を癒してくれるやつはおりません。

私は、所有して、今年で14年目になる英国車を所有しています。
ちゃんとメンテナンスしていれば、それに応えてくれる、ずっと乗れる車だと思っています。
英国は、保守メンテナンスをすることを重要視し、古いものを大切に使う文化があり、父から、その子供へと代々、引き継がれるものも、珍しくは無いようです。
私は、そのような文化が好きです。

ギターも、樋口様のリペアを頂き、ずっと大切にしていきたいと思います。


フレット交換

1. フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
2. フィンガーボードはあらかじめオレンジオイルで湿気を含ませています。

3.フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。
4.フレットを抜き終えたフィンガーボードです。

5.軽くサンディングします。このとき凸部を集中的に狙います。
6.サンディング中にも何度も平面を確認します。

7.フレット溝にたまった削りカスやゴミなどをクリーニングしました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フィンガーボードのアール(曲面度)をゲージで測定します。
10.フレットプレスジグに先端ビットを取り付けます。

11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにカットしたフレットをプレスします。
12.カット直後のフレット端はこのようになっています。バインディング処理を行いましょう。

13.バインディング処理専用のカッターでフレット端を処理します。
14.バインディング処理後のフレット端です。

15.カット片は行方不明にならないように一カ所に確実に集めておきます。
16.1つ目のフレットプレスジグをセットします。

17.フレットプレスしている様子です。
18.この要領でフィンガーボードのハイフレット部をプレスしていきます。

19. 2つ目のプレスジグです。
20. 3つのねじを締めながらプレスしていきます。

21. 3つ目のプレスジグです。残りのフレットはこれで装着していきます。
22.プレス直後のフレットです。端が飛び出しています。

23. フレットのカット片が行方不明にならないように指で押さえながらカットしていきます。
24. カットし終えた直後のフレット端です。

25. フレット端を斜めに加工するヤスリで全体をすりあわせていきます。
26. 反対側(1弦側)も同じようにファイリングしていきます。

27.端加工を終えたフレットです。
28.さらにフレット端専用のヤスリでバリ取りを行います。

29.引き続いてフレットのすりあわせを行いましょう。
30.フィンガーボードをマスキングテープで保護した後、直定規でフレット山の直線性を確認します。凹んでいる部分にマーキングします。

31.フラットファイルで凹んだ部分が削れるまで(平面になるまで)、削っていきます。
32.フレット山を丸くするヤスリで平らになったフレット上部を削ります。(削りすぎないように注意します)

33.1.#400~#600~#800と順に細かい紙ヤスリで磨いていきます。
34.最後はコンパウンドで仕上げです。

35.マスキングテープ、プロテクタを外しましょう。
36.ピカピカのフレットになりました!

ブリッジ周辺リペア(ブリッジプレートリペア~ブリッジピン穴加工)

1.リペア前の写真です。弦の巻き部分がサドルに乗りかかってきています。
2.ブリッジプレートに弦のエンドポールの食い込みが見られます。ブリッジプレートの埋木補修を行います。

3.メイプル材でプレート補修用のプラグ作製を行います。
4.プラグが切り落とされる直前で止めておきます。

5.プラグ中央部にポンチで凹みをつけます。
6.プラグ中央に1.5mmφの小穴を開けます。

7.プラグがほぼ完成しました。取り外しましょう。
8.完成したプラグたちです。

9.プラグの裏には木目方向にケガキ線を入れておきます。
10.次にブリッジプレートにこのカッターで窪み加工を行います。

11.カッターをボディ内に入れて・・・。
12.まず、1,3,5弦のプレートに窪みをつけます。

13.ベースとハンドルをつけて回転させるとボディ内のカッターがブリッジプレートに窪みをつけます。
14.1,3,5弦のプレートに窪み加工が出来ました。

15.次に先ほど作製したプラグを、プレートの窪みに接着しましょう。指の周りにマスキングテープの粘着面を外側にして、プラグを軽く固定します。
16.その上にタイトボンドを塗り、プラグの小穴に小ネジを取り付けます。

17.この状態でプレートの窪み部分へ運びます。
18.小ネジがピン穴からのぞきました。ボディ内からプラグをプレートに押しつけている状態です。

19.同じ要領で3弦と5弦もプラグを取り付けます。
20.ワックスペーパー、当て木を当ててマグネットクランプし、固着を待ちます。

21.翌日、2,4,6弦のプレート窪み加工を行います。写真はカッターでプレートに切り込みを入れている様子です。
22.2,4,6弦の窪み加工が終わりました。

23.同じ要領でプラグを指に乗せて・・・。
24.プレートに運んでいきます。

25.ブリッジプレートにプラグがはまりました。このとき、木目方向を示す線がプレートと一致して、横方向になっていることを確認しておきます。
26.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネット・クランプします。このまま更に一日固着を待ちましょう。

27.翌日、プレートにプラグが固着できました。
28.プラグ固着が完了したところで、プラグにブリッジピン穴をあけていきます。このとき、ボディ内に当て木を当てて1つずつあけていきます。

29.ブリッジプレート・リペアが完了しました。
30.引き続いてブリッジピン穴加工を行います。糸ノコの刃を使って、弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

31.さらにミニルーターを使って糸ノコ刃の跡の幅を広げ、弦の導出角度をつけていきます。
32.ブリッジピン穴加工が終わったブリッジです。

33.弦を張った状態です。サドルと弦の適切な角度が確保され、弦の巻き部分もサドルには乗らなくなりました。
34.ブリッジプレートの上に弦のエンドポール部が確実に固定されるようになりました。

ナット溝クリーニング~ナット作製

1.ナットを外しました。比較的きれいなナット溝です。
2.よく切れる彫刻刀で古い接着剤とゴミを削り落とします。

3.クリーニングが終了しました。ナット作成に移りましょう。
4.ネックの幅に合わせてTUSQナット・スラブにケガキ線を入れます。

5.ネックおよびフィンガーボードと全接触するように加工します。
6.溝にピッタリとはまるように整形できました。

7.ナットの密着度はギターの音色に大きく影響を与えるポイントの一つです。
8.逆光で見ると接触状態がよくわかります。

9.サイド部を加工した後、フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
10.上部をカットしました。

11.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
12.弦溝加工前のナットです。

13.オリジナルナットの弦溝幅を弦溝定規を使って読み取ります。
14.弦溝位置を新しいナットにマーキングしていきます。

15.弦溝をマーキング位置に従って正確に掘り込みます。
16.弦高調整前のナットの完成です。

サドル作製

1.サドル溝の幅に合わせてTUSQサドル・スラブにケガキ線を入れます。
2.サドルの幅と端の丸みを加工し、ブリッジに取り付けました。このときサドル底面がブリッジに密着していることを確認します。

3.一旦サドルスラブをはずし、イントネーターとチューナを装着します。
4.全フレットのピッチが最適になるようにサドル山の位置をイントネータで探りながら調整を行います。

5.サドルピーク位置と目標サドル高計算値を紙に控えておきます。
6.サドルスラブを目標高にカットしました。

7.さらにサドル上面にピーク位置を書き込みます。
8.サドル山を削りだして行きます。このとき、サウンドホール側は斜面に、ブリッジピン穴側は放物曲面になるようにします。

9.目標位置にサドル山を削り出せました。
10.弦を張って弦高の微調整を行います。

弦高調整

1.2フレットを指で押さえて、1フレットと弦の隙間がぎりぎり近づくまでナットの弦溝を掘ります。
2.ストリングリフターで弦を待避しておきます。

3.弦溝を徐々に掘り込んでいきます。
4.この要領で残りの弦の弦溝深さを調整します。