ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-35

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広島県にお住まいのM.T.さんからMartin D-35のリペアご依頼をいただきました。リペア前の症状は「音のコモリ」「低音弦のビビり」などでしたが、リペア後、期待通りの素晴らしい音色を奏でてくれるようになりました。
リペア後、ギターを受け取られたM.T.さんから暖かいメッセージが届きました。M.T.さん、本当にありがとうございました。
M.T.さんが素晴らしいギターライフを送られることを祈っております。

リペアをお願いいたしておりました広島のM.T.です。
昨日、Martin D-35届きました。

「工房マスターの日記」では小生のギターが生まれ変わっていく様子が伝えられ、とても丁寧な仕事ぶりで安心しながら、そして早く手にする日を待ちわびながらの楽しい毎日でした。

期待通り、リペア前のビビリやこもり感がなくなり、低音域・高音域共に伸びのあるきれいな音のギターに生まれ変わりました。
生まれ変わったこのギターと共に、更にギターの腕前を上げられるよう日々付き合っていこうと思っております。

樋口様にリペアをお願いして本当に良かったと思っています。
　　ありがとうございました。

最後にギター工房オデッセイ・樋口様のますますのご健勝と「生まれ変わることを心待ちにしているたくさんのギター達のため」のご活躍を祈念しております。


フレット交換

1.　フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
2.　フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。

3.フレットを抜き終わるまで全神経をフレットに集中させます。
4.直定規を当てて、フィンガーボードの平面を確認します。

5.軽くサンディングします。このとき直定規で確認した凸部を集中的に狙います。
6.サンディング後のフィンガーボードです。

7.溝に残った削り粉やゴミなどを吸い取っていきます。
8.フィンガーボードの準備完了です。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.ボディ内部はジャッキで保護しておきます。

11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
12. フレットのタング部分（フィンガーボードの中に埋め込まれる部分）を専用のプライヤーでカットします。

13.バインディング処理されたフレット端です。
14.まず一方の端を軽く打ち込みます。

15.次にもう片一方を打ち込みます。
16.そして中央部を打ち込みます。

17.この要領で打ち込んでいきましょう。
18.全フレットを打ち終わりました。

19.フィンガーボードからはみ出した部分をカットしていきます。
20.ボディをアクリル板で保護した後、フレット傾斜加工専用のファイル（やすり）で削っていきます。

21.　反対側（1弦側）も同じように傾斜をつけていきます。
22.　フレット端の処理を行います。このヤスリはフィンガーボードに傷が付かないようになっている特殊なものです。

23.　引き続いてフレットのすりあわせを行いましょう。
24.マスキングテープでフィンガーボードを全てプロテクトしました。

25.　直定規でフレット山の直線性を確認します。凹んでいる部分にマーキングします。
26.　フラットファイルで凹んだ部分が削れるまで（平面になるまで）、削っていきます。

27.　フレット山を丸くするヤスリで平らになったフレット上部を削ります。（削りすぎないように注意します）
28.　ヤスリの削り面です。このように凹んでいます。

29.別角度からのヤスリの断面です。
30.まず紙ヤスリ（#400）でフレットを粗研磨します。

31.次は#600の研磨タワシで中研磨します。
32.引き続き#800で細研磨をします。

33.最後はコンパウンドで仕上げます。
34.マスキングテープ、プロテクタを外しましょう。

35.フレット交換完了です。ピカピカのフレットになりました！

トップ板打痕跡リペア

1.打痕跡（A）です。
2.打痕跡（B）です。

3.打痕跡（C）です。
4.シェラックニス（スーパーブロンズ）です。これを綿棒で塗っていきます。

5.打痕跡（C）に塗っている様子です。
6.塗装～乾燥工程を数回繰り返した後、水研磨します。

7.水研磨終了後のトップ板です。
8.コンパウンドで磨き上げたトップ板です。

9.塗装リペア後の打痕跡（A）です。
10.打痕跡（B）です。

11.打痕跡（C）です。

ナット溝クリーニング～ナット作成

1.ナットを外しました。多めの接着剤の跡が見られます。
2.よく切れる彫刻刀で古い接着剤とゴミを削り落とします。

3.クリーニングが終了しました。ナット作製作業に移りましょう。
4.TUSQナットスラブをナット溝の幅に合わせてカットします。

5.切り出しを終えました。次にスロットに密着するようにナット面を削っていきます。
6.この部分の整形には十分時間をかけます。ナットはサドルと共にギターの鳴りに大きく影響を与えます。

7.逆光を利用しながら密着性を確認すると効率的、かつ効果的なナット作製作業ができます。
8.ナット上部のカットを行いましょう。1フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。

9.上部をカットしました。
10.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。

11.放物曲面を削り出すとナットらしくなってきました。この曲面形状も音響特性に影響を与えます。
12.弦溝専用の定規を使ってオリジナル・ナットの弦溝位置を読みとります。

13.その弦溝位置を新しいナットに書き込みます。今回は溝間隔を若干縮め、1弦側に全体を寄せます。
14.弦溝をマーキング位置に従って正確に掘り込みます。

15.弦高は少し高めに調整しています。サドルと一緒に弦高調整する際の削りしろを残しておきます。

ブリッジピン穴加工

1.ピン穴加工前のオリジナルのブリッジです。
2.糸鋸の刃で弦の導出口をサドル側に寄せていきます。

3.糸鋸での加工終了後のブリッジです。
4.ミニルーターで溝を整形していきます。

5.弦導出口加工を終えました。
6.オリジナルのブリッジピン状態です。奥までささっていないのがわかります。

7.リーマーで少しずつ穴系を大きくしていきます。
8.ブリッジピンが奥まで入るようになりました。

9. 居心地の良さそうなブリッジピンたちです（笑）

ピッチ調整～サドル作製

1.イントネータを取り付けました。ブリッジ保護のためにマスキングテープを貼り、サドル溝には薄アクリル板（1mm厚）を置いています。
2.全フレットポジションのピッチを確認していきます。ピッチズレがあれば、イントネーターとペグを調整します。

3.サドルピーク位置が決まりましたら、紙に控えておきます。
4.TUSQスラブをサドル溝に合う厚みと幅を切り出しました。

5.サドルとブリッジは隙間の無いように加工しましょう。（ナットと共にこれがいい音になるポイントです）
6.ピッチ調整で控えておいた、サドルピーク位置を上部をカットしたサドル上面に書き写します。

7.サドル上面に書き写されたピーク位置をなぞるようにサドル山を削りだしていきます。
8.オフセットサドルの完成です。

弦高調整

1.弦を張りました。ナット弦高を調整しましょう。ストリングリフターで弦を持ち上げておきます。
2.弦溝加工用のヤスリで徐々に弦高を落としていきます。

3.弦高調整後のナットです。
4.サドル高も調整しました。