ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-60

戻る
大阪府にお住まいのT.K.さんからMorris W-60のリペアご依頼をいただきました。

トータルリペアという内容お預かり致しました。
高級な部材が使用されており、ギターの大きな潜在能力を感じました。

リペア後のギターを受け取られて、暖かいメッセージが届きました。
T.K.さん、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

昨日やっと帰宅してギターが到着しているのを確認しました。
本日、少しですが、鳴らすことができました。

もともと、音色は気に入っていたのですが、以前よりも、 TUSQとピン加工のおかげでしょうか、ボディに伝わって 各弦がしっかり鳴ってくれているという感じです。

特に、低音弦が気持ちよくしっかり鳴ってくれています。
気のせいかも知れませんが、ハイポジションでフレットがほんの少し高くなっているようで、セーハがしやすく非常に引きやすいです。
それとお勧めの弦もやわらかくて引きやすいです。

明日からまた2週間ほど出張になるので、このギターとしばらくお別れに なってしまうのがつらいぐらいです。


フレット交換

1. フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
2. フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。

3.フレットを抜き終えたフィンガーボードです。
4.直定規を当てて、フィンガーボードの平面を確認します。

5.軽くサンディングします。このとき凸部を集中的に狙います。
6.サンディング中にも何度も平面を確認します。

7.サンディングを終えたフィンガーボードの表面です。
8.フレット溝にたまった削りカスやゴミなどをほじくり出していきます。

9.フィンガーボードの準備完了です。
10.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

11.ボディ内部はジャッキで保護しておきます。
12.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。

13.フレットを切った端の状態です。バインディング処理を行いましょう。
14.タングカッターでバインディング部の上にかかるタングをカットします。

15.タング部をカットしました。両端に同じ処理を行います。
16.まず一方の端を軽く打ち込みます。

17.次にもう片一方を打ち込みます。
18.そして中央部を打ち込みます。

19. この要領で打ち込んでいきましょう。
20. 4フレットまで打ち込み終わりました。

21. 全フレットを打ち終わりました。
22.次にはみ出した部分をカットしていきます。

23. ここまでの作業で切り出したフレット片です。作業中に行方不明にならないように一カ所に集めておきます。
24. ボディをアクリル板で保護した後、フレット傾斜加工専用のファイルで削っていきます。

25. 反対側(6弦側)も同じように傾斜をつけていきます。
26. フレット端の処理を行います。このヤスリはフィンガーボードに傷が付かないようになっている特殊なものです。

27.引き続いてフレットのすりあわせを行いましょう。
28.フィンガーボードをマスキングテープで保護した後、直定規でフレット山の直線性を確認します。凹んでいる部分にマーキングします。

29.フラットファイルで凹んだ部分が削れるまで(平面になるまで)、削っていきます。
30.フレット山を丸くするヤスリで平らになったフレット上部を削ります。(削りすぎないように注意します)

31.1.#400~#600~#800と順に細かい紙ヤスリで磨いていきます。
32.最後はコンパウンドで仕上げです。

33.マスキングテープ、プロテクタを外しましょう。
34.ピカピカのフレットになりました!

ブリッジピン穴加工

1.糸鋸の刃で弦の導出口をサドル側へ寄せます。
2.ミニルーターで糸鋸の溝を広げていくとともに、導出角度をつけていきます。

3.ブリッジピンが奥まで入っていなかったので、少し径をリーマーで大きくします。
4.ブリッジピン穴加工を終了しました。

ナット溝クリーニング~ナット作成

1.ナットを外しました。比較的きれいなナット溝です。
2.よく切れる彫刻刀で古い接着剤とゴミを削り落とします。

3.クリーニングが終了しました。ナット作成に移りましょう。
4.ヘッド側の方が幅が大きいので、こちらを基準に切り出します。

5.ナット溝の厚みに調整しました。次は底面を斜めに加工します。
6.溝にピッタリとはまるように整形できました。

7.明るいところで見ると、底面はこんな斜面になっています。
8.ヘッド側の大きさに合わせて切り出しましたので、今度はフィンガーボード側に合わせて斜めにカットします。

9.次は上面部をカットしましょう。フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
10.上部をカットしました。

11.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
12.弦溝加工前のナットが出来上がりました。

13.オリジナルナットの弦溝幅を弦溝定規を使って読み取ります。
14.弦溝位置を新しいナットにマーキングしていきます。

15.弦溝をマーキング位置に従って正確に掘り込みます。
16.弦高調整前のナット完成です。

ピッチ調整~サドル作製

1.イントネーターとチューナーを取り付けます。(弦は待避していたものを再利用します)
2.全フレットポジションのピッチを確認していきます。ピッチズレがあれば、イントネーターとペグを調整します。

3.サドルピーク位置が決まりましたら、紙に控えておきます。
4.TUSQスラブをサドル溝に合う厚みと幅を切り出しました。

5.サドルとブリッジは隙間の無いように加工しましょう。(これがいい音になるポイントです)
6.ピッチ調整で控えておいた、サドル高を書き写し、サドルをカットします。

7.また、ピッチ調整で控えておいた、サドルピーク位置をサドル上面に書き写します。
8.サドル上面に書き写されたピーク位置をなぞるようにサドル山を削りだしていきます。

9.オフセットサドルの完成です。ナットの弦溝を調整した後、サドルの高さを再調整します。

弦高調整後

1.弦高調整後の完成したナットです。
2.こちらは完成後のサドルです。

3.ブリッジピンも奥までしっかりと納まりました。
4.参考までにこちらはリペア前の写真です。