ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-50

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前回のGinson J-45に引き続き、大分県にお住まいのK.K.さんからビンテージGibsonのリペアご依頼をいただきました。1966年製のJ-50です。

リペア前の試奏ではコモリ気味の音が気になりました。

今回もトータルリペアを実施いたしました。リペア後は40年以上の歳月を感じさせない、リフレッシュを終えた素晴らしい音を奏でてくれるようになりました。

ギターを受け取られたK.K.さんから早速メッセージをいただきました。K.K.さん、ありがとうございました。

先ほどギターを受け取りました。
早速チューニングをして試奏いたしました。
前回同様一発チューニング、ペグも軽く(笑)
気持ちよくチューンの後、ピッキング、フィンガリングをそれぞれ15分程してみました。

弦の柔らかめのテンションはそのままに、数分の試奏にも関わらず立ち上がりが良くなっているのに驚きました。(音が良くなったのでそう感じたのでしょうか)
何といっても軽くつま弾くだけで気持ちよく反応するレスポンスのよさ、 煌びやかな粒の揃った音など今回もすべてに満足のいく仕上がりでした。
また、こちらも永く付き合っていけそうです。

本当にありがとうございました。


リペア前の状況確認

1. かなりフレットがすり減っています。
2. そしてエッジのすり減ったナットです。かなり弾き込まれています。

3. そしてアジャスタブル・サドルは前回のJ-45と同様に、スロットタイプに交換し、音響特性の向上を狙いました。
4. オリジナルペグは安定したチューニングを維持できない状態ですので交換することにしました。

5.ブリッジ端が浮きかけています。接着しましょう。
6.ロッドカバー取り付けネジ穴が広がっています。爪楊枝が入るくらいの太さになっているので、埋木します。

1. はんだごてでフレットを暖めながら、
2. 山の部分がすり減ったフレットですので、

3. 根気よく、ゆっくりと抜いていきます。
4.全フレットを抜き終えました。

5. フィンガーボードが弦方向に直線であることを確認します。極端にふくらんでいる部分は切削します。
6. フィンガーボードがフラットになるようにサンディングします。

7. フレット溝に入ったサンディングの粉を取り除きます。
8. フレット打ち込み準備完了です!

9.打ち込みを始める前にボディ内フィンガーボード下に
10.フレットの準備です。フレットワイヤーにアールをつけていきます。

11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
12.両端を先に打ち込みます。 まず、片方から・・・。

13.そしてもう片方を打ち込みます。
14.両端が打ち込まれた状態で最後に真ん中を打ち込みます。

15.14フレットまで打ち込み終えました。
16. 今回、新調したニッパーです。切れ味が良いと作業効率が進みますね。

17.全フレットを打ち込み終えました。
18.フィンガーボードからはみ出たフレットを切り取っていきます。

19.切り取り端の処理専用のファイルでエッジ処理を行います。
20.反対側も同様にしてエッジ処理を行います。

21.フレットエッジ処理です。専用のヤスリでバリを取り除いていきます。
22.このヤスリはフレットに触れる面のみヤスリ面になっており、フィンガーボードに触れる面はフラットになっています。

23.フレットすりあわせを始めましょう。フレットだけが顔を出すようにフィンガーボードをマスキングテープで覆っていきます。
24.すりあわせ準備完了です。

25.すりあわせ部分を特定するために直定規を当てて、凹んでいる部分に赤ペンでマークを入れていきます。
26.マーク部分がすれるまでフラットファイルでフレットを削っていきます。

27.部分的なすりあわせができたことを確認した後、全体的な確認を行います。逆光を利用すると効率的です。
28.フレット山の断面が台形になっていますので、逆U字になるよう、専用のファイルで削ります。

29.サンドペーパー(#400)で粗研磨します。
30.研磨たわし(#600)で中研磨を行い・・・。

31.さらに研磨たわし(#800)で細研磨を行います。
32.最後はコンパウンドで最終研磨です。

33.フレットすりあわせは完了しました。アクリル板、マスキングテープをはずします。
34.ピカピカのフレットはギターのよみがえりのサインみたいですね。

ナット作製

1.後の工程でアジャスタブルサドル加工を行いますので、ナット作製を先に済ませて、弦を張れるようにしておきます。
2.まず最初にナット溝をクリーニングしましょう。よく切れる彫刻刀で古い接着剤などを削り落としていきます。

3.ナット溝のクリーニング完了です。長年ナットを支えていた古い接着剤が取り除かれました。
4.TUSQナット・スラブの底面処理をして、サドル溝にはめます。隙間があります。もう少し調整しましょう。

5.これでナットは密着できました。(ギターの音響特性にとって、ここが重要なポイントです)
6.ナットとネック、フィンガーボードが密着していることを確認します。

7.この角度からも密着状態を確認します。そして、上部ケガキ線を入れます。
8.ケガキ線の上部を切り取りました。同時に再度の幅も合わせておきます。

9.ナットに放物曲面をつけていきます。
10.反対側も同様に削り込んでいきます。

11.ナットらしい形になってきました。
12.弦溝位置を専用の定規を使ってマーキングしていきます。

13.弦溝専用のヤスリで浅めに弦溝を掘っていきます。後で行う弦高調整しろを残す程度の深さにとどめておきます。
14.弦高調整前のナットの完成です。

アジャスタブル・サドル加工~サドル作製

1.今回のケースでは底部分が平坦ではなかったので、こちらの加工から進めます。
2.ブリッジからはみ出しているボンドを削り取ります。(トップ板に傷つけないように注意しながら作業を進めます)

3.溝の底を平坦にするために端材とサンドペーパーでこのような治具(?)を作りました。
4.底のトップ板をならしていきます。

5.底面の整地が完了しました。
6.ローズウッド材を少し大きめに切り出しました。これを加工していきます。

7.ベルトサンダーで徐々に厚みを薄くしていきます。
8.厚みが出たところで今度は端の丸みをつけていきます。

9.厚みと幅の削り出しは完了です。
10.高さも合わせて埋木の完了です。

11.この段階でブリッジピン穴加工も施しておきます。
12.糸鋸の刃で作った溝をミニルータでなぞるように弦の導出口の角度をつけていきます。

13.ブリッジピン穴加工が完了です。
14.イントネーターをセットしながら待避していた弦を張ります。このときブリッジにはマスキングテープを2枚重ねておきます。

15.チューナーを使って各弦、全フレットのピッチを調整していき、イントネーターでサドル山位置を確定していきます。
16.サドルピーク位置が確定したイントネーターです。

17.サドルピーク位置をマスキングテープにマーキングしていきます。
18.イントネーターを外し、先ほどマーキングしたピーク位置を囲むようにサドルスロットの場所を確定させます。

19.サドルスロット位置を2枚重ねの下のマスキングテープにマークするために、押しピンを軽く押しつけます。
20.サドルピーク位置の書かれた上側のマスキングテープを剥がし、サドルスロット位置がマークされた2枚目のマスキングテープだけにします。

21.サドルスロット溝位置を書き込みます。(ブリッジ奥に見えているのはサドルピーク位置の書かれたマスキングテープです)
22.ブリッジ加工治具を取り付けました。

23.トリマでサドルスロット溝を掘っていきます。
24.掘り終えた直後のサドル溝です。

25.治具、マスキングテープ(下側)を外しました。ブリッジ加工はこれで終了です。次はサドル作製に移りましょう。
26.TUSQサドルスラブの長さを決めます。少し大きめにしておきましょう。

27.サドルの長さと端の丸み付け処理を終えました。
28.サドル上部を切り取りました。この高さはオリジナルのサドル高より若干高くしています。(弦高調整しろを残しておきます)

29.サドル上面部にサドルピーク位置を書き写していきます。
30.ピーク位置を削りだしていきます。

31.オフセット部分は細めのヤスリで削りだしていきます。
32.弦高調整前のサドルの完成です。

ペグ交換

1.長年このJ-50についていたペグを外します。ご苦労様でした(笑)。
2.この箱に入っている新しいペグに交換します。

3.新しいペグへ交換完了しました。
4.これから何十年も使っていくペグです。頑張ってください(笑)。

ブリッジ浮きリペア

1.ブリッジ浮き部分にタイトボンドを流し込んでいきます。
2.余分なボンドをふき取ります。

3.クランプしました。
4.隙間のボンドがあふれてきますので、こちらもきれいにふき取ります。

5.このまま一日乾燥させます。
6.固着完了です!

弦高調整

1.ナットの弦溝深さでナット高を調整します。
2.ストリングリフターで弦を持ち上げておいて、弦溝を削ります。こうすると弦を緩めたり、締めたりしなくてすみます。

3.弦高調整を終えたナットです。
4.サドルも最適な高さまで下げ、弦高調整完了です。