ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

S.Yairi YD-304

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熊本県にお住まいのT.M.さんからS.Yairiのリペアのご依頼をいただきました。内容はトータル・リペアで、フレット交換、弦周りのTUSQ化、ボディのレタッチ・研磨を行いました。

年月を経てきた素材の枯れた音が素晴らしく響くギターに仕上がりました。

リペア後、T.M.さんから暖かいメッセージが届きました。
とても励みになる言葉をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒、よろしくお願い致します。

この度は、誠にありがとうございました。

私の思っていた以上の仕上がり、また音色につきましてはこんな音がでるんだ?ってびっくりしております、今眺めては、つま弾き、また眺めてはつま弾き繰り返しております。 本当にありがとうございました。

樋口様は日記のページの中に「生きる意味」と言うことを書かれておられました、人の為に尽くすまさに、その通りだと思います。
これからもリペア楽しみの待っておられる皆さんの為に頑張ってください。
遠くより応援いたします。
またご縁がありましたらよろしくお願い致します。

Sヤイリ リペア 重ねてお礼申しあげます。
ありがとうございました。


フレット交換

1. フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
2. フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。

3.フレットを抜き終えたフィンガーボードです。
4.直定規を当てて、フィンガーボードの平面を確認します。

5.軽くサンディングします。このとき凸部を集中的に狙います。
6.サンディング中にも何度も平面を確認します。

7.サンディングを終えたフィンガーボードの表面です。
8.フレット溝にたまった削りカスやゴミなどをほじくり出していきます。

9.フィンガーボードの準備完了です。
10.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

11.ボディ内部はジャッキで保護しておきます。
12.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。

13.フレットを切った端の状態です。バインディング処理を行いましょう。
14.タングカッターでバインディング部の上にかかるタングをカットします。

15.タング部をカットしました。両端に同じ処理を行います。
16.まず一方の端を軽く打ち込みます。

17.次にもう片一方を打ち込みます。
18.そして中央部を打ち込みます。

19. この要領で打ち込んでいきましょう。
20. 14フレットまで打ち込み終わりました。

21. ミドルフレットまで終わりました。
22.全フレット打ち終わりました。(右下の紙の上にある粒々はフレット・タング部をカットした破片です。)

23. 次にはみ出した部分をカットしていきます。
24. ボディをアクリル板で保護した後、フレット傾斜加工専用のファイルで削っていきます。

25. 反対側(6弦側)も同じように傾斜をつけていきます。
26. 傾斜加工終了後のフレット端の様子です。

27.引き続いてフレットのすりあわせを行いましょう。
28.フィンガーボードをマスキングテープで保護した後、直定規でフレット山の直線性を確認します。凹んでいる部分にマーキングします。

29.フラットファイルで凹んだ部分が削れるまで(平面になるまで)、削っていきます。
30.フレット山を丸くするヤスリで平らになったフレット上部を削ります。(削りすぎないように注意します)

31.1.#400~#600~#800と順に細かい紙ヤスリで磨いていきます。
32.最後はコンパウンドで仕上げです。

33.マスキングテープ、プロテクタを外しましょう。
34.ピカピカのフレットになりました!

ブリッジ・サドル溝加工~ピン穴加工

1.サドル溝の底がU字になっています。これではサドルとの接触面が小さくなりますので、再加工することにしました。
2.ブリッジ加工治具を取り付けたところです。(自作治具ですが、役に立っています)

3.サドル溝をルータビットがなぞるようにガイドの調整を行います。(溝を外すとブリッジが大変なことになります!)
4.再加工後のサドル溝です。底面が平らになったのがわかります。

5.ブリッジピン穴加工も同時に行います。
6.サドル溝とピン穴を加工し終えました。

ナット溝クリーニング~ナット作成

1.ナットを外しました。年月を感じさせる接着剤とゴミの付着状態です。
2.よく切れる彫刻刀で古い接着剤とゴミを削り落とします。

3.クリーニングが終了しました。ナット作成に移りましょう。
4.ヘッド側の方が幅が大きいので、こちらを基準に切り出します。

5.ナット溝の厚みに調整しました。次は底面を斜めに加工します。
6.溝にピッタリとはまるように整形できました。

7.明るいところで見ると、底面はこんな斜面になっています。
8.ヘッド側の大きさに合わせて切り出しましたので、今度はフィンガーボード側に合わせて斜めにカットします。

9.こんな感じで斜めにカットしました。
10.両方ともカットしました。上から見るとこんな感じです。

11.さらにヘッド側に放物曲面をつけると、ナットらしくなってきます。
12.弦溝位置を専用の定規を使ってマーキングしていきます。

13.マーキング位置を弦溝専用ファイルを使って浅めに掘ります。
14.弦高調整前のナットの完成です。次はサドル作製に移りましょう。

ピッチ調整~サドル作製

1.イントネーターとチューナーを取り付けます。(弦は待避していたものを再利用します)
2.全フレットポジションのピッチを確認していきます。ピッチズレがあれば、イントネーターとペグを調整します。

3.サドルピーク位置が決まりましたら、紙に控えておきます。
4.TUSQスラブをサドル溝に合う厚みと幅を切り出しました。

5.サドルとブリッジは隙間の無いように加工しましょう。(これがいい音になる素です)
6.目標サドル高よりも少し高めに切り取ります(弦高調整しろを残しておきます)。

7.ピッチ調整で控えておいた、サドルピーク位置をサドル上面に書き写します。
8.サドル上面に書き写されたピーク位置をなぞるようにサドル山を削りだしていきます。

9.オフセットサドルの完成です。ナットの弦溝を調整した後、サドルの高さを再調整します。

弦高調整

1.ストリングリフターで持ち上げながら、ナットの弦溝を徐々に掘っていきます。
2.少しずつ削っては高さを確認し・・・という繰り返しを行います。

3.ナットの完成です。
4.サドルも完成しました。

塗装リペア

1.いくつかの打痕跡と・・・・・
2.広い範囲でのトップコート・ダメージが見られました。

3.バックにはいくつかのスクラッチ跡が見られました。
4.打痕後にはラッカーを少し垂らして乾燥させるサイクルを繰り返します。

5.スクラッチ跡は紙ヤスリで少し掘り下げ・・・。
6.こちらもラッカーを垂らして乾燥させるサイクルを繰り返します。

7.約一週間ラッカーを乾燥させた後、盛り上がったラッカーをこれで削ります。(指を切らないように十分注意しましょう)
8.カミソリに貼ったテープの厚みだけ刃が浮き、周りに影響を与えず、ラッカーの盛り上がりを削ることが出来ます。

9.ひげを剃るよりも少し力がいるかもしれませんね(笑)。
10.1カ所削り終えるとこんな感じになります。全てのオーバーラッカーの部分を削っていきます。

11.カミソリの作業を終えましたら、#1000~#2000のサンドペーパーで水研磨していきます。
12.トップコート・ダメージも一緒に研磨していきます。このあと、#4000の研磨フィルムで更に研磨します。

13.最後はコンパウンドです。
14.打痕跡はほとんど目立たなくなり、トップコート・ダメージは完璧になくなりました。

15.バックボードのスクラッチ跡も同じ方法でリペアします。
16.オーバーラッカーを削り取った跡です。

17.トップ板と同じように水研磨します。
18.こちらもほとんど目立たなくなりました。