ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA FG-180J

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香川県にお住まいのK.H.さんから、ご自身の分身とも言うべき思い入れのこもったギターリペアご依頼をいただきました。

ギターを受け取って試奏させていただいた率直な感想は、こもった音で、ギターの能力の一割も出し切っていない、という感じでした。

弦周りを重点的にリペアするとともに、トップ板の穴リペアも行いました。

リペア後、K.H.さんから暖かいメッセージが届きました。
ありがとうございました。

これは「別のギター」です。
響く低音、鈴鳴りの高音、弾いた後の余韻の音が効果的に使えます。
ナット・サドルの出来も素晴らしく、見とれてしまいます。

特にオクターブ調整されたサドルは絶品です。

友人に自慢できます。オデッセイさんを紹介してくれた友人に一番に行ってきましたが、彼のギブソンより大きな低音を出したので、ビックリしていました。

今まで冷遇されてきたFGが生まれ変わりました。思わず僕もリペアして欲しいなぁ、と思いました(笑)。

潜在能力を引き出していただき、ありがとうございました。
毎日弾いて、美しい音を楽しませてもらいます。

グレードアップしたFG自身が一番喜んでいると思います。30年前のギターが生まれ変わりました。
リペアーって素晴らしいですね。本当にありがとうございました。


リペア前の状況確認

1. ナットは最初から外れていました。また、ナット溝の下にはシムが挟まれています。
2. サドルです。弦溝を掘ったかのようにすり減っています。

3.サドルを外してみました。サドル溝の底が平面ではなく、U字型の底をしており、いびつになっています(ガタガタです)。
4.この状態では弦の振動はほとんどボディに伝わらないと思われます。こもった音の原因の一つはここにあるかと思いました。

5.これは音には直接大きな影響を与えませんが、トップ板のフィンガーボード横に小さな穴が空いています。

トップ板穴リペア

1.最初に一番簡単なリペアから行いましょう。
2.スプルース材の木目が一番似ている部分をカットします。

3.このスプルース片を円柱型にカットしていきます。
4.穴に入れるにはまだ大きな円柱ですね。

5.穴にはまる大きさになりました。ボンドをつけて押し込みます。
6.ピッタリはまりましたが、トップ板から少しだけ飛び出しています。

7.飛び出た部分を彫刻刀で削ります。トップ板は削らないように!
8.それでは、着色しましょう。

9.このケースの場合、オレンジシェラックニスが適当です。
10.綿棒に少量浸します。

11.先ほどのスプルース片にニスを吸わせます。
12.ほとんどわからなくなりました。

1. ナットの接着剤はゴム系のものが使用されていました。ここにも音のコモリの原因の一つが見つけられました。
2. 接着剤とシムを彫刻刀で削り取っていきます。かなり時間を要しました。

3. クリーニング終了後のナット溝です。
4.ナットスラブをネックの幅に合わせてカットします。

5. 厚みを合わせたナットを溝にはめ込みました。
6. ナットとフィンガーボードとの間に隙間がないことも確認します。(ここがポイントです)

7. ナット底面調整が終わりましたら、ナット上面部を加工します。
8. カット完了です。

9.幅を合わせながら、ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
10.ナットらしい形状に近づいてきました。

11.弦溝位置にマーキングをします。
12.弦高調整前のナットの完成です。

ブリッジ・サドル溝底面の再加工~ブリッジピン穴加工

1.この底面だけを平面に加工します。
2.サドル切削用治具を固定します。

3.現状の溝に沿って、少し深い溝を掘ります。
4.これでサドルとブリッジの密着性が高くなります。

5.ブリッジピン穴加工です。ミニルーターで角度をつけながら、弦の導出口をサドル側に寄せます。
6. ブリッジ加工が完了しました。

ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーターを取り付けました。
2.サウンドホールにチューナーをつけて各弦、フレットのピッチを調整しながら、サドルピーク位置を探していきます。

3.サドルピーク位置を紙に写しておきます。
4.サドル・スラブを削りだし、イントネーターの高さを参考にサドル切り出し線を入れます。

5.高さは少し高めにしておきます。そして上面は平らに削っておきます。
6.先ほど書き写したサドルピーク位置をサドル上面に書き写します。

7.サドルピーク位置を削りだしていきます。
8.オフセットサドルの完成です。

弦高調整

1.ストリングリフターで弦を待避させながら、ナット弦高調整を行います。
2.深く掘りすぎないように、少しずつ低くしていきます。

3.弦高調整後、接着前のナットです。
4.ネックとの密着性を再確認しておきましょう。

5.こちらもOKです。
6.弦を張って試奏しました。

7.オリジナルの音色からは想像もつかない、素晴らしい音を奏でるようになりました。