ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-20

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北海道にお住まいのK.S.さんからリペアのご依頼を受けました。往年の名器、YAMAHA L-10です。
K.S.さんはギターリペアDIY派です。ペグ交換、ブリッジピン交換、トップレタッチなどが丁寧に行われていました。
今回はナット・サドル(オフセット)のTUSQ化、および弦高調整のご依頼です。



【T.T.さんから最初にいただいたご相談のメールです】

実は、20数年前にアルバイトをして購入し、結局うまく弾くことができず、そのまましまってあった モーリスの安いギター(W-20)が、最近目に留まり 「今度こそうまく弾けるようになるぞ!」
と練習に励んでいましたが、あまりの弦高に、ついついインターネットのギターリペアのHPを 見よう見まねで、家にあったヤスリでナットとサドルを削ってしまいました。

結果、削りすぎてしまい悲惨な状態となってしまいました。

その時は 「どうせいらないギターだから」と思ったのですが、捨てるつもりで立てかけてあるギターを 見ているうちに、昔の思い出がよみがえってきて、なんだかギターがとってもかわいそうになってきてしまいました。

そんなこんなで、良心的そうなギター工房を探しているうちに、オデッセイ様に行き着き、安いギターでも助けていただけそうでしたので、恥をしのんでメールをさせていただいている次第です。

その後、実際にギターを拝見させていただき、ナット・サドル・ブリッジピンのTUSQ化、そしてトラスロッドで弦高調整できると判断し、リペアを実施いたしました。

リペア作業内容自体はこれまでと同じようなものでしたが、T.T.さんの「昔の想い出のよみがえる」と「ギターがとってもかわいそう」というフレーズが頭を離れませんでした。

私はリペアを行うとき、必ずアコースティックギターのBGMをかけながら作業をします。
それは、私自身の心を落ち着け、集中力を増す、という目的もあるのですが、それよりも、
「いい音になぁれ・・・いい音になぁれ」と、まるで呪文を唱えるかのような気持ちでリペアを行うためでもあるのです。

ナット作成段階の写真です。
新しいサドルをはめ込んだブリッジです。


弦を張って弦高調整を行った後、試奏しました。
T.T.さんは予備に新しい弦を同梱されていたのですが、 私はオリジナルの(古い)弦のまま試奏していました。
「音が変わった」というのが第一印象でしたが、 このギターの潜在能力に驚かされるようになりました。
年月を経たギターからの枯れた音を楽しみました。
ギターをご返却送付させていただきました後、 T.T.さんから早速メッセージが届きました。

【T.T.さんからいただいた、リペア後のギターに関する暖かいメッセージです】

おはようございます。
先ほどギターが届きました。

ギター、見事に蘇りました。というかこのギターで初めて聞いた音になってます。
自慢じゃないですけが、私は音楽や、音のことに関してはド素人です。
その私にもはっきりわかるほど良い音になってます。 届いてすぐに、チューニングをしている段階ですぐに感じて、ニヤニヤしてしまいました。

樋口さんのおっしゃるとおり、まさに「艶のある音」って感じです!
特に高音の艶、のびが変わっている感じがします。 音量も大きくなっているような気がします。

隣の部屋にいた女房(一応子供のころからピアノ経験ありで、私の音符の師匠)が、 「ぜんぜん変わってるね」と見に来たほどです。

安いギターだから・・・と思っていましたが、何だかとても、いとしくなってしまいました。 樋口さんのおっしゃるとおり、後10年もつなら、大事にいっぱい使ってあげようと思います。
樋口さんの見事な仕事ぶりに大感謝です!
本当の意味で大事なことは何か?という事に気づかせていただき、ありがとうございました。

実はあれからギターに異常なほど興味が出てしまい 「一生もののギターがほしいなア」と思いはじめています。
(もちろん今回のギターも大事にしますが・・・)

長々と書いてしまいましたが、今回、樋口さんと繋がりが持てて本当に良かったです。

また、きっとお願いすることがあると思いますので、その時はよろしくお願いいたします。

T.T.さん、暖かいメッセージをお送りいただき、本当にありがとうございました。
お役に立てましたこと、想い出のたくさん詰まったギターを蘇らせることが出来ましたこと、を
本当に嬉しく思っております。
今回リペアさせていただきましたギターも、T.T.さんに弾かれて幸せだと思います。
この度は、弊工房にご依頼いただきまして、誠にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げます。
また、今後とも何卒よろしくお願いいたします。