ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD D-25

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シンガーソングライター 片江宏典さんからビンテージギターのリペアご依頼をいただきました。
片江さんがイギリスに行かれたときに購入されたものです。
さすがに年代物だけあって色々な箇所にリペアの跡が見られました。

片江さんはレコーディングやライブに雑音が入ることを気にされており、特にペグ・ノブの緩みなど、雑音に影響する箇所を含めてのトータル・リペアを行いました。

今回のリペアでは、弦の振動を伝える重要な部分であるサドルとナットの「前回行われていたであろうリペア」のリペアも集中して行いました。
その結果、リペア前と比較してかなりの音響特性の改善が見られました。


早速家族やスタジオ8の方に音を聴かせて自慢 してました!
スタジオの方も劇的な音の変化には驚いていて、
ものすごく良いギターを買ったようなものだと言われまし た。
このギターが本来持っていた音が引き出されているような感覚があり、
今からレコーディングが楽しみです!

リ ペアをお願いして約2週間程でしたが、
樋口さんのブログを通してその丁寧なお仕事と情熱にふれることでいろいろと考えさせられました。

自分の歳よりも古いヴィンテージのギターを持つという事は今までにこのギターが出会ってきたたくさんのオーナーや職人の方の想いを引き継いでいくということなんですね。
そう思うとギターという物自体に対して何故か尊敬してしまうような気持ちが生まれてきて自分でも不思議な感覚です。

これからもずっと大切にしていきたいと思います。
今回は本当にありがとうございました!

今までギターをリペアに出した経験も無く、いろいろ心配な事もありましたが
樋口さんと出会えて本当に良かったです!

今後ともよろしくお願いします!

片江宏典さんです!ギターが蘇ってピース!です(笑)

リペアギターをご返却後、片江宏典さんから暖かいメッセージが届きました。
ギターを蘇らせることができて、私も嬉しい気持ちで一杯です。
レコーディング、頑張ってくださいね!
ありがとうございました。


弦待避~ナット溝クリーニング

1. 弦をヘッド部に待避しておきます。傷が付かないように
2. これはオリジナルのナット接着状態です。リペアを経てきたようで、ナットの下に分厚く接着剤と、かさ上げ材(シム)が見えます。

3. ナットをはずしました。接着剤の量は予想以上です!
4. なかなかネック部材が見えてきません。

5.ようやくネック部材が見えてきました。
6.ナット溝クリーニングの完了です!


1. 指板にオレンジオイルで湿り気を与えた後、
2. フィンガーボードを傷つけないように、ゆっくりゆっくり抜いていきます。

3. 全フレットを抜き終わりました。
4.軽くフィンガーボードをサンドペーパーがけします。

5. フレット溝に残ったゴミや削りかすをほじくり出していきます。
6. この後のフレット打ち込み工程のために念入りに掃除しておきましょう。

7. 掃除終了後のフレット溝です。
8. 15フレット以上の打ち込みからボディを保護するためにクランプでロックしておきます。

9.これはフレットベンダーというフレットにアールをつける治具です。
10.フィンガーボードよりも少し大きめにフレットをカットします。

11.このギターはフレットにバインディングがないので、
12.途中までフレット打ちが進んだところです。

13.全フレットを打ち終わりました。
14.フィンガーボードから余分に出た部分をカットします。

15.フレット端の処理です。専用のファイルブロックを使います。
16.1弦側も同じように整形します。

17.整形が終わったフレット端です。
18.フレットすりあわせを行う前にマスキングテープとアクリル板で

19.フレットすりあわせ準備OKです。
20.フラットファイルで少しずつ、すりあわせていきます。

21.フレットの平面が出ましたら、フレットの山を丸くするために
22.研磨スポンジ(#600相当)で磨いて行きます。

23.さらに目の細かい研磨スポンジ(#800相当)で
24.最後はコンパウンドで仕上げです。

25.すりあわせが終わりました。ギターを保護していた
26.フレット打ち直し作業の終了です!


ナット作製

1. TUSQスラブからオリジナルサドル(右手前)より少し大きな
2. オリジナルナットと弦溝定規を使って、弦溝位置をマークします。

3. 弦溝を浅めに掘ります。(後で弦高調整するために
4.4. サドルを作成した後、弦を張って弦高調整を行います。


サドル作製

1.オリジナルのサドル状態です。3枚ものシム(かさ上げ材)が
2. オフセットサドル作製のためにピッチ調整治具を使いました。

3. サドル位置を変化させながらピッチ調整を行います。
4. ピッチ調整が終わった後のサドル位置をメモしておきます。

5. TUSQサドルを削りだして、
6. 先ほどのサドルピーク位置をサドル上面に書き写しておきます。

7.ピーク位置の線をたどりながら、サドルを削っていきます。
8. サドルスロットにピッタリはまりました。


サウンドホール・割れリペア

1. サウンドホール周囲にトップ板のたわみが見られます。
2. ロゼッタの接着がとれています。

3. こちらも同様ですね。
4. ロゼッタを取り外すと、トップ板の割れが見つかりました。

5. トップ板をタイトボンドで修復します。
6.次はロゼッタをバインディング用接着剤で接着します。

7.ロゼッタ溝に接着剤を流し込みます。
8.そろっと、そしてしっかりとロゼッタをはめ込みます。

9.クランプで抑えて接着剤の乾燥を待ちます。
10.トップ割れリペアの完了です!


ペグリペア

1.このギターのペグは長期間の使用によりノブ(つまみ)部分に
2. そこでノブを引っ張ってみると少しの力で抜けてしまいました。

3.同じようなノブを確認したところ、1,3,4,5弦のノブが
4.これはゴルフクラブのシャフトとヘッドを接合する

5.2液を充分混ぜ合わせて・・・(エポキシ接着剤です)。
6.ペグのノブ固定部に少し着けます。

7.こんな感じで接着剤を乗せた後・・・。
8.ノブを押し込んで固定します。(この接着剤は強力なのですが、固着するまで数日かかります)

9.ペグポール周りのペグキャップ(周囲のドーナツ状のリング)
10.ペグ、およびペグキャップを一旦全てはずします。

11.ペグキャップ周辺が摩耗しているのがわかります。
12.マホガニの細粉とタイトボンドを混ぜて埋木整形材を作ります。

13.摩耗した部位に整形材を塗ります。
14.この状態で乾燥させると穴径が少し狭まった状態になります。

15.ペグキャップはしっかりと固定されるようになりました。
16.そのほかのキャップも同様の処置をして、ペグを取り付けてリペア完了です。


トップ板塗装クラックリペア

1.トップ板塗装部にクラックが入っています。
2.クラックを埋めるようにラッカーを塗っていきます。

3.このまま完全に乾燥するまで数日待ちます。
4.ここで登場するのが新しい治具「スクレイパー・バーニシャー」というスクレイパーの刃を整形するものです。

5.安全カミソリの刃をバーニシャーの硬質金属部でこすって、
6.そしてカミソリの刃に上のようにメンディングテープを張ります。

7.オーバーラッカーした塗装部分をこれで削ると、
8.後は研磨シート(#4000)で軽く研磨し、コンパウンドで磨いてリペア完了です。