ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-50

戻る
兵庫県のT.I.さんから長い間眠っていたギターのリペア・調整のご依頼を受けました。
リペア前の試奏で気になったのは、フレット位置、弦を問わずビビりが多いことでした。

その大きな原因は指板のしなりによるものでした。本来ですとフレットをはずし、指板のファイリング、そしてフレットの打ち直し、という工程が必要なのですが、今回はフレットのすりあわせだけで修復する調整を行いました。

結果、目標の6弦12フレットの弦高2.8mmをクリアし、ビビりも完全になくすことが出来ました。

リペア後、T.I.さんからメッセージが届きました。
T.I.さん、ありがとうございました。

この度はお世話さまでした。ようやくじっくり弾く時間ができたのでお便りします。
HP拝見しましたが結構重症だったんですね。
飛び飛びでビビるのはそのせいでしたか。
にもかかわらず、注文どおりビビりも完全に無くなり、快適です。
音のほうですが、先ずサスティーンの長さに驚きました。特に 3,4弦はいつ終わるのかと思うほどの伸びで、それが15F まで続くのには驚きです。消音をキチンとしないとメロディが 立たず私の技術では苦労するほどです。
また5,6弦の音量アップも確実に感じられ、良い意味でドン シャリになったように思います。
音質は、これがタスクの音なのでしょうか?やや金属的な透き通った音で大満足、どうやらマーティンD-41SPを買わず に済みそうです(爆)。今後ベストマッチ弦を探っていきたい と思います。
樋口さんのリペア技術と研究熱心さ 、そしてその誠実なお人柄には頭が下がりました。


1. 弦を待避させた後、フレットにマスキングテープを
2. ボディはアクリル板でプロテクトし、フレットすりあわせ準備完了です。

3. フラット・ファイルでフレットをすりあわせていきます。
4. フレット先端が直線上に並ぶまでファイリングを繰り返します。

5. フレット先端が直線上に並びましたら、今度は角を削り、
6. 次は#400~#800の紙ヤスリでフレット表面を

7. さらに#1200の研磨たわしで磨きをかけ・・・。
8. #1600のたわしでさらに磨きをかけます。

9. 最後にコンパウンドで研磨すると、フレットがピカピカになります。
10.ボディプロテクタ、マスキングテープを取り外して

サドル作製

1. オリジナルサドルよりも1.5mm高いサドルを作製します。
2. ネックが順ぞりだったので、ロッド調整でストレートから若干順ぞり気味に戻しました。そのため、サドル高が高くなったわけです。

3. 切り出した直後のTUSQサドルです。
4. オフセット位置をケガキするため、上面を平らにならします。

5. サドル上面にオフセット位置を書き込みます。
6. サドルの山を削っています。山の位置に注意しながら

7. 手前が新しいTUSQサドルです。オリジナルよりも
8. ブリッジに装着しました。これだけ高いと音響特性に

ナットの作製

1. 切り出したナットスラブをナット溝に合わせて削っていきます。
2. ナット溝にはまる厚さになりました。

3. オリジナルナット(左)と新しいTUSQナット(右)です。
4. 徐々に放物曲面傾斜をつけながら、斜め底面も削っていきます。

5. オリジナルナットと、ナット用弦溝定規を参考に、
6. 弦溝を彫り込んでいきます。

7. 完成したTUSQナット(右)とオリジナルナット(左)です。

ブレイシングはがれリペア

1. 経年変化でバックボードのブレイシングが浮く、というより
2. こちらもそうです。この列を一旦全てはずして、接着し直すことにします。

3. はずしたブレイシング材の裏です。
4. 彫刻刀で接着剤をはがしていきます。全てのブレイシング材が

5. 多めにタイトボンドをつけて押しつけます。
6. あふれたボンドはウェットティッシュで素早く拭き取ります。

7. ジャッキで固定して、ボンドを乾燥させます。
8. ブレイシングリペアの完了です。