ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson B-25

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兵庫県にお住まいのラキオさんから、リペアのご依頼を受けました。比較的新しいギターなのですが、手を加えるべき点が多く必要でした。

メインの変更点はアジャスタブルサドルを通常のサドルになるよう、ブリッジを埋木する点です。そのほかは下記の項目を実施しました。

1) フレットすりあわせ
2) 内部ブレイシングはがれリペア
3) 弦周りのTUSQ化(ナット・サドル・ブリッジピン)
4) ネック裏側の塗装レタッチ

リペア後とても暖かいメッセージが届きました。
ラキオさん、今回は本当にありがとうございました。これからも精進していく所存です。どうぞ、よろしくお願い致します。

この度はお世話になりました。

アジャスタブルサドル・リプレース、大成功でしたね。
想像以上の効果でした。ゆるんでいたタガがぴしっとはまった様な、締まった芯のある音になったと思います。
新品同様で買ったこのギターですが、アジャスタブルサドル特有の音が好きになれず、ブレイシングの剥がれ、雑なフレット・ナットの仕上げなどギター自体の程度も悪 かったこともあり、手放そうかとも考えました。
そんな折、日頃からチェックしてい たオデッセイのホームページで”フレット音痴リペア”のサドル溝の掘り直しを見て オデッセイへの改造・リペアの依頼を決めました。
樋口さんの仕事振りは、ホームページ・ブログから受ける印象の通り、丁寧・実直な ものでした。今回の作業に先立って、しっかり打ち合わせをさせていただいたおかげで、過不足なしの100点満点のリペアをしていただけました。大満足です。
向上心・探究心いっぱいの樋口さん、どんどんリペア技術の幅を広げて、これからも みなさんに 喜ばれる仕事を続けてください。影ながら応援しています。
本当にありがとうございました。


アジャスタブルサドルの取り外し

1. これがアジャスタブルサドルです。2本のネジでサドル高を
2. ネジをはずすと、大きなサドル溝が現れました。

サドル溝埋木の製作

1. オリジナルのアジャスタブルサドルよりも
2. カンナ・彫刻刀・紙ヤスリなどを使って、

3. 後の工程でサドル溝を掘りますので、はめた後にガタのない、
4. ようやく埋木が完成しました。簡単そうに思える作業ですが、

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ピッチ調整(サドル溝位置の特定~サドル形状の特定)

1. 今回、サドル基準位置を特定するためにSaddleMaticという
2. この治具はナットから12フレットまでの距離を測定してくれます。

3. そして、治具をブリッジ側に向けると、
4. ブリッジ上にはマスキングテープを貼って、作業しやすくしておきます。

5. 弦を張り、基準位置を中心にピッチ位置の合うサドル位置を
6. サドル位置を探しながら、全ての弦の全フレットのピッチが合うことを

7. 全ての弦のサドル山ターゲット位置を求めることが出来ました。
8. 埋木外周が赤い線、青い点とそれを結んだ線がサドル山ターゲット位置、

サドル溝の切削作業

1. ギターをベンチ上に固定していきます。
2. ブリッジだけのぞくようにして、ボディを保護しておきます。

3. ブリッジ加工治具を仮固定しています。
4. さらにブリッジ加工治具をボディに固定していきます。

5. そしてボディをベンチに固定していきます。
6. ブロック完了です。手術前のようですね(笑)

7. 上面からのぞくと、このようにブリッジとサドル位置をマークした
8. トリマに2.5mmのストレートビットを取り付けます。

9. トリマのビットがサドル溝に沿って移動するように
10. また、 サドル溝を超えないようにもガイドを固定していきます。

11. 実際にトリミングを始める前にビット先端がサドル溝を
12. そして、いよいよサドル溝を掘ります!時間的には数秒で終わりますが、

13. サドル溝を掘り終えた直後の
14. マスキングテープもはがしました。大成功です!(笑)

15. 埋木をはずすには、このような
16. かなりきつめに作った埋木ですので、はずすには少し力がいります。

17. サドル溝切削加工が完了した埋木です。
18. オーナーの方(ラキオさん)のリクエストにより、サドル溝の底に

19. この穴で取り外しにくいサドルを裏から
20. 元の位置に戻しましょう。

サドルの作製

1.. サドル溝の大きさに合わせて、サドルを切り出します。
2. サドルの底面の平面を削り出します。

3. 残るは、サドル山の加工です。
4. サドル溝位置の制限から、このようにオフセットを持たせた

5. 狙ったサドル山位置にピークが来るように、
6. オフセット加工を施したサドルを装着した埋木です。

7. ブリッジに装着した新しい埋木ユニットの完成です。

フレットすりあわせ

1. 本来、フレットのすりあわせはフレットすり減りによるビビり解消
2. フレット山の形状がいびつですと(特に台形の場合)、その原因だけで音がビビったり、こもった音がしたり、良くないことだらけです。

3. 軽くフラット・サンドファイリングを行います。
4. 整形が目的ですので、このフレット山作りの工程で、均一なフレットの山を作っていくことに集中します。

5. フレット山の形がそろい、かつ山が直線上に並んだら、
6. #800の紙ヤスリ、#1000、#1200のスポンジたわし、と順に

7. これは#1200のスポンジたわしで磨いているところです。
8. オーナさん(ラキオさん)のリクエストで、ストリンググロスを

9. ボディプロテクタ、マスキングテープをはがします。
10. きれいな山のフレットに変身しました(笑)。

ブレイシングはがれリペア

1. このギターの向かって右側バックブレイシングが
2. 原因は不明ですが、製造段階での不具合のような感じです。

3. タイトボンドを入れたスポイトを使って、はがれ部分に
4. 隙間にすりこませるのと、あとでふきとれるので、多めに流していきます。

5. 半乾きの布(ウェットティッシュ)でブレイシング浮き部分に
6. タイトボンドをふき終えたところです。

7. ボンドが乾燥し始める前に手早くクランプをつけていきます。
8. このまま乾燥させること一昼夜以上・・・。

9. ブレイシングはばっちり接着されました。
10. バックからコンコンと軽くたたくと、ブレイシングがしっかり接着されたことがわかります。

ネック裏側の塗装レタッチ

1. ラッカー仕上げのこのギターは、ギタースタンドのラバーに
2. 痛められた部分をサンドブロックで削り落としていきます。

3. 痛めた部分を削り終えました。
4. 削った部分の上からラッカーニスを塗ります。乾燥に十分時間をかけましょう(1~2日程度)。

5. #800の耐水ペーパーで水研磨します。
6. どんどん行きましょう(笑)。

7. 次は#1200の研磨シートでの水研磨です。
8. まだまだです。

9. 次は#2000の研磨シートです。
10. こうして順に見ていくと表面がスムーズになっていくのがわかりますね。

11. 研磨シート最後は#4000です。
12. オイルフィニッシュのようにも見えますね(笑)

13. 最後はコンパウンドです。
14. 元通りピッカピカになりました。ラバーには注意しましょう(笑)。

ナット作製

1. これはオリジナルのナット位置です。1弦が指板端から4.5mm
2. TUSQスラブから削り出しを行います。これは切り出したところです。

3. 放物曲面をつけていきます。
4. 1弦の位置をオリジナルと同じにして、弦の間隔もオリジナルナットと同じようになるように、マークを入れます。

5. 弦溝掘り込んでいきます。この段階では浅めで止めておきます。
6. 弦高調整前のナットの完成です。

7. 弦高調整を終えました。
8. リクエスト通りの弦溝の完成です。