ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-41SQ

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神戸市にお住まいのS.O.さんからおまかせリペアということで ご依頼をいただきました。
試奏させていただいた結果、以下の項目をリペア・調整することといたしました。

 1) バック・ブレイシング剥がれ修復
 2) バック・ボード・クラック・リペア(ボード割れ修理)
 3) ピックガード交換(TOR-TIS素材)
 4) ナット・サドル・ブリッジピンのTUSQ化

このギターはS.O.さんのお父様から譲り受けられたもので、長い間ギターケースに収められていたそうです。
封印されていた素晴らしい音が蘇った、リペア後の試奏でそう感じました。

バックボード・リペア

1. 長い間のハードケースの中の環境のせいか、
2. 複数のブレイシングが剥がれていると、どこが剥がれているのかわからなくなります。一カ所一カ所、スキマゲージと紙切れでチェックしていきます。

3. 合計三カ所のブレイシング剥がれがわかりましたが、
4. ブレイシングの剥がれによって、バックボードに割れが入っており、塗装部も割れていました。

5. 今回のリペアには、この写真の「心強い仲間たち」に
6. これは、ボード内のジャッキです。車のジャッキと同じ原理で、中央の金属部分を回していくと、上下に動きます。(ギター材質を傷つけない様に、コルクを貼っています)

7. こちらは市販のクランプですが、接触面の向きを変え、
8.  スポイトでタイトボンドを吸い上げています。小出しにしている訳です。

9.  小出しにしたタイトボンドは、このようにスポイトに吸入されます。
10. ブレイシング割れ部分に、スポイトでタイトボンドを注入していきます。

11. スポイトから剥がれ部分にタイトボンドを流し込んでいきます。
12. こちらの剥がれも流し込んでいきます。

13. 余分なボンドをふき取った後、先ほどのジャッキで「つっぱり」ます。
14. こちらのツールも活躍中です。

15. バックボードのクラック(割れ)も同時に接着していきます。

ナット・サドル作製

1.ナットとサドルを並行して作製していきます。まず、スラブに
2.TUSQスラブを糸のこでカッティングしていきます。まずは、大きめにカットです。

3. 長さだけカットしたTUSQスラブです。手前がオリジナルの
4. サドルの輪郭線をスラブに書き込みます。この時点でも大きめに、大きめに!

5. ナット溝には古い接着剤が残っています。かなり、厚めに
6. よく切れる彫刻刀で古い接着剤を削っていきます。下地のネック部・フィンガーボードは削らない様に!

7. フィンガーボードのバインディング接着も朽ちていた様で、
8. こちらも接着していきます。使用したのは瞬間接着剤です。

9. ナット作製に戻ります。こちらは粗削りを終えたところです。
10. 徐々にオリジナルに近づけていきます。

11. 幅、高さ共にオリジナル・ナットに近づいて来たところで、
12. ナットの弦溝を掘るためにオリジナルのナットを重ねてみます。

13. オリジナルナットの溝を参考にして、新しいナットに
14. 一旦新しいナットを取り外し、マーキングされた直線を専用のファイル(やすり)で切り込みを入れていきます。

15. 弦の太さに合わせて、ファイル(やすり)を替えながら、
16. 手前が新しいナットです。溝の深さは浅めにしています。

ピックガード作製

1. オリジナルのピックガードを厚紙の上に載せ、型紙を作ります。
2. ピックガードの形状を厚紙に写していきます。

3. 型紙をハサミで切り取っていきます。
4. TOR-TIS素材に型紙の形状を油性マジックでなぞっていきます。

5. TOR-TIS素材は熱を加えると柔らかく加工しやすくなるので、
6. やけどしない様に、でもアッチッチ状態でカッティングを行います。

7. カッティングを終えたTOR-TIS素材は、しばらくの間お湯を
8. 粗削り状態のピックガードです。これから、外観をきれいにしていきます。

9. 直線でカットされている部分をヤスリで丸く削っていきます。
10. 内側の曲線は角材の上に載せて作業すれば、削りやすくなります。

11. 完成した新しいピックガードです。
12. 両面接着シートを使います。まずはスペースを確保します。

13. 両面接着シートの片面を剥がし、ピックガードを貼り付けます。
14. ピックガードの周囲をカットし、ピックガードの裏に接着シートが張り付いた状態にします。

15. ボディの接着位置を決めるために、マスキングテープを貼って、
16. 完成した新しいピックガードです。