ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Chaki W-3

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千葉県にお住まいのS.T.さんからChaki W-3とMartin D-35のリペアご依頼をいただきました。Chaki W-3はブリッジ脱着、ブリッジプレートリペア、フレット交換などを含むトータルリペアを行いました。 リペア後のギターを受け取られて、とても温かいメッセージが届きました。
後日、Gibson SouthernJumboのリペアご依頼もいただきました。S.T.さん、本当にありがとうございました。

樋口 様

千葉在住のS.T.です。

この度は、Chaki、Martinのリペア有難う御座いました。

週中に届いた為、ほとんど弾くことができませんでしたが、今日一日(土)思う存分弾きたおしました。

リペアをされた方々が、口を揃えてコメントされているように、「音量アップ」、「音の明るさ」「サスティーンの長さ」まさにその通りでした。「うれしいの一言」に尽きます。

44年前に親にせがんで買ってもらったChaki、40代半ばになりもう一度ギターをやろうと思い立ち購入したD-35、どれも私にとっては思い出深いギターです。

今年、一月に定年を迎え、自分へのご褒美としてD-45を購入しようと考えておりましたが、果たして、これから先持っているギター全てを弾ききれるだろうか? と思い、リペアを決意した次第です。

結果は、間違っておりませんでした。

この後は、ギブソン、ヤマハも控えております。

その折には、また、宜しくお願い致します。

時節柄、体調を崩されませんようご自愛下さい。

本当に有難う御座いました。

S.T.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回、S.T.さんの2本のリペアさせていただきながら、ギターに込められた強い思いや、たくさんの想い出の存在を感じた次第です。
そしてオーナー様の思いはギターを素晴らしい状態に復活させる力があることを改めて感じました。

特にChakiはリペア前の状態が良くなかったことと、Martin D-35のリペア前の音色があまりにもこもっていたので本来の音色に戻せるか、少し不安を抱えながらの作業でしたが、リペア後は2本ともに素晴らしい音色を奏でてくれるようになりました。
ギターの潜在能力ってこんなに大きいのか、と認識しました。

Gibson, YAMAHAをリペアさせていただける日を楽しみにしております!

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ブリッジ脱着

1.オリジナルブリッジです。
2.浮きが見られますので、一旦取り外して再接着します。

3.ラバーヒーターです。
4.ヒーターをクランプしました。

5.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むのを待ちます。
6.接着面が暖まったところでナイフを挿入して行きます。

7.慎重にナイフを進めていきます。
8.ブリッジが外れました。

ブリッジ取り外しの様子です。


別角度からです。


9.接着面をクリーニングします。
10.ブリッジ側接着面もサンディングブロックでクリーニングします。

11.接着面周囲をマスキングテープで保護しました。
12.湯煎したニカワを接着面に塗ります。

13.接着面全体に薄く塗っていきます。
14.そっとブリッジを乗せます。

15.クランプしています。
16.クランプで溢れたニカワを拭き取っていきます。

ブリッジ再接合の様子です。


別角度からです。


17.マスキングテープを剥がします。
18.このまま固着を待ちます。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.トップ板からブリッジプレートが浮いている状態ですので、新しいものと交換します。

3.オリジナルブリッジプレートが外れました。
4.メイプル材から新しいブリッジプレートを切り出しました。

5.タイトボンドをつけてボディ内に入れます。
6.クランプしました。このまま固着を待ちましょう。

7.ブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
8.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


9.ブリッジピン穴を開けました。
10.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

7.サドル高の切り出しを終えました。
8.サドル上部にピーク位置を書き写します。

9.サドルピーク位置を削りだしていきます。
10.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

11.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
12.ブリッジピン穴加工を終えました。

13.サドルを取り付けました。
14.完成したブリッジとサドルです。

ピックガード取り付け

1.ピックガードを切り出しました。
2.サウンドホールエッジを調整しています。

3.位置決めしています。
4.ピックガード取り付け完了しました。

ペグ交換

1.オリジナルペグです。経年消耗によるガタ、バックラッシュが大きいので交換します。
2.取り外しました。

3.新しいペグを取り付けています。
4.交換完了しました。