ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Chaki W-3

戻る
大阪府にお住まいのT.I.さんからChaki W-3とCat's Eye CE-800のリペアご依頼をいただきました。Chaki W-3はフレット交換、ブリッジプレート・リペアを含むトータルリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口英之 様

このたびはChaki W-3とCat’s Eye CE800をリペアしてくださりありがとうございました。
サイトを拝見していて、樋口様ならこれらのギターを蘇らせて下さるだろうとの判断が間違っていなかったと思いました。

ブリッジが浮いて以来、約35年間も黙って眠っていたChakiですが、まず「弦を張る」ことができてうれしい限りです。
初めて手にした当時の音は忘れてしまっていますが、あのころの爆音が蘇っているのではないかと思います。

Cat’s Eyeのギターも、もともとバランスの良い音だったのではないかと記憶していますが、今回リペアしていただいて、よりクリアな、どちらかと言えばこれも「爆音系」に変身したのではないかと感じました。

今年94歳になる母がChakiの音を聴きたがっておりますので、近々、実家に持って行って聴かせようと思います。
本当にありがとうございました。

さて、樋口様に伺いたいのですが、だいたいどれくらいのスパンでリペアをお願いするものでしょうか?
あるギタリストに聞くと「2~3年毎」という答えでしたが、弾く頻度などにもよるでしょうし、おおまかなご意見を頂戴できれば幸いです。
まだまだ暑い日が続きますが、どうぞお体ご自愛のうえ、多くのギターを蘇らせてください。次はGUILD D-50をリペアしていただけるように努力します。

樋口様、そしてご家族のご健康ご多幸を心からお祈り申し上げます。

このたびは本当にありがとうございました。

T.I.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

この度、T.I.さんご夫妻のギターをリペアさせていただく機会をいただき、また蘇った「爆音」にご満足いただけて、感謝の気持ちで一杯です。

Chaki W-3, Cat’sEye CE-800ともに弊工房から送り出す際、とても明るい表情だったことがとても印象に残っています。
そしてこれからも現役として活躍していくことと思います。

リペア・スパンに関してですが、演奏スタイルや演奏頻度、保管状況、その他の条件によって大きく異なって参りますが、毎月50時間前後のご使用で、弦周りパーツ消耗リペアは約3年周期を目安にされてはいかがでしょうか?

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


ブリッジ脱着

1.ブリッジに浮きが見られます。
2.ブリッジの大きさに合うラバーヒーターを準備しました。

3.ヒーターをクランプします。
4.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むまで待ちます。

5.接着面にナイフを挿入していきます。
6.少しずつナイフを進めていきます。

ブリッジ取り外しの様子です。


7.ブリッジが外れました。
8.接着面をクリーニングします。

9.再接着の準備が整いました。
10.湯煎したニカワを接着面に塗ります。

11.全体に薄く塗っていきます。
12.そっとブリッジを乗せます。

ブリッジ再接合の様子です。


13.マスキングテープを剥がします。
14.このまま固着を待ちます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
10.第一のフレットプレス・ジグです。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

13.タングニッパでフレット端の加工を行います。
14.タング部のカットされたフレット端です。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端を整形している様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、位置決めのためにポンチで凹みを入れています。
4.プラグの中央に小穴を開けるためにプラグ中央にポンチで凹みを入れます。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
10.1、3、5弦の凹み加工が終わった様子です。

11.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
12.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

13.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
14.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

15.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
16.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

17.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
18.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

19.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
20.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


21.プラグにブリッジピン穴を開けました。
22. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックガード脱着

1.ピックガードが浮いています。
2.比較的簡単に取り外すことが出来ました。

3.古い両面接着シートが残ってます。
4.少しずつ溶かしていきます。

5.接着シートを取り外せました。
6.新しい両面接着シートを少し大きめに切り出しました。

7.周囲を切り取ります。
8.位置決めして接着しました。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.ガタが大きく、チューニングに問題がありますので交換します。

3.取り外しました。
4.GOTOH社製のペグを取り付けていきます。

5.交換を終えました。
6.安定したチューニングが行えます。