ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-35

戻る
福井県にお住まいのG.N.さんからMartin D-35のリペアご依頼をいただきました。ボディバインディング剥がれリペア、ピックガード交換、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。

バインディング剥がれリペア

1.ボディバインディングです。
2.経年収縮によって剥がれています。

3.トップ2カ所、バック1カ所が剥がれています。
4.再接着を行った後、ゴムベルトで固定します。

5.一カ所ずつしっかり接着していきます。
6.バック・バインディングも固定できました。

7.バインディング接着部分は塗装も剥がれていたので、タッチアップを行いました。
8.ラッカーが乾燥した後、安全カミソリでスクレイピングします。

スクレイピングしている様子です。


9.さらに水研磨します。
10.剥がれリペア完了です。

11.タッチアップ跡もほとんど目立たなくなりました。
12.バック・バインディングもボディにしっかり固着できました。


ピックガード交換

1.オリジナルピックガードです。
2.接着面にナイフをゆっくり挿入していきます。

3.ボディ保護用の紙も一緒にゆっくり進めていきます。
4.オリジナルピックガードが外れました。

5.両面接着シートがボディに付いたままです。
6.溶剤を付けてしばらく待ちます。

7.接着シートを剥がします。
8.剥がれました。

9.ボディ側はクリーニングを終えて準備完了です。
10.少し大きめにTOR-TIS素材を切り出しました。

11.オリジナルピックガードをテンプレートとして貼り付けます。
12.周囲を削っていきます。

13.TOR-TIS素材は常温では割れやすいので、慎重に削ります。
14.両面接着シートを大きめに切り出しました。

15.ピックガードに貼り付けて周囲をカットします。
16.位置決めを行っています。

17.ピックガード交換完了です。
18.ギターの表情ががらっと変わりました。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを行いました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。